すべてはあの花のために①


「……いや、違う」

((えー……。この流れで否定しますか普通))

「(がーん……)」

((ほ、ほら! 落ち込んじゃったんだけど! どうしてくれるの!))


「友達だけじゃない」

「(ん? どういうこと?)」


 その他のメンバーはどうやらわかったようで、にやにやとアキラを見ている。――そして。


「葵は、大切な友達であり、俺たちの仲間だ」


 アキラはそう言ってから「だから」と続け、少しだけ溜めてから最後の言葉を口にする。



「葵、だからお前を生徒会庶務にしたい。引き受けてくれるか?」

「――! ~~っ、もちろんだ。ばかやろー……!」


 葵は泣きながらも、今までで一番の笑顔付きでそう答えた。



「あらあらまあまあ!」

「ん……?」


 どうしたのか。キサ以外のメンバーの様子がおかしい。
 いや、ある意味ではキサも少し様子がおかしいのだけれど、何故か誰一人として視線を合わしてはくれなかった。



 ――でも、そんなのも一瞬で。


「それじゃあ、よろしくな。葵」


 アキラのその一声で、その場のみんながお互いの顔を見ながら微笑み合った。


 * * *


 ――カシャッ


「隠し撮りですかミノルさん。犯罪ですね」

「え!? そこまで言わなくてもいいじゃない」


 その様子を少し遠くで見ていたキクは、カメラを構えている理事長とそんな話をしていた。


「それで? いい写真は撮れましたか」

「うん! もうばっちりだよ! これからたくさん、写真残しとかないとね~」


 そこにはいつものメンバーに新しい子が加わり、その子を包むような笑顔をしたみんなが写っていた。


 カメラに残った映像を、理事長の指が優しく撫でる。
 よっぽど嬉しいんだろう。そう思ってキクは理事長の横顔をこっそり覗き込むが。


「(え。どう、して……)」


 理事長の顔は、笑ってなどいなかったのだ。
 寧ろ――――とても苦しそうだった。