両手を口元へと持ってきた葵も、だんだんとわかってきたようだ。彼女の表情が、嬉しさを喜びを、噛みしめるような表情へと変わり始める。
「だからな? ……? ……っ」
先を続けようとしたチカゼが何かに気付いたようで、袖で葵の目元をゴシゴシ拭き始める。
「(え? わたし、泣いて……?)」
それまで泣いているのに気付かなかった葵に、にかっとお得意の笑顔が飛んでくる。
「ツバサがお前を抱き締めたのは、お前が近付いてオレらと友達になろうとしてたから」
「……ちかくん」
「だから、お前に近付いてもう友達だろ? って。ただわかってもらいたかったんだ。お前はもう、とっくにオレらと友達なんだ、ってさ。……別に、気付くのが遅過ぎたからって、寂しいとかそんなこと全然思ってねーから」
その言葉を聞いた葵は、とうとう本格的に泣き出してしまった。
「(ツンデレありがどうございまあーずっ!)」
((いやいや、あんた泣きながらそんなこと思ってるの? それ聞いたらみんな今度は友達やめるわー))
「(やめます)」
((ええ、そうして是非))
脳内にそう返事をして、こほんと咳払いで改めた葵は、まずはオウリとアカネの方を向いた。
「じゃ、じゃあオウリくんが抱き付いてきて、怒ってるのに可愛いのは?」
「うん! もう友達だからだよ!(なんか違うけど)」
「(コクコク!)」
「……その、アカネくんも?」
「もちろんだよあおいチャンっ」
アカネがオウリの分まできちんと答えてくれて、そして教えてくれた。
「キサちゃんも……?」
「もちろん! あっちゃんっ」
言いながら葵に抱き付いてきたが、勢いがよすぎてオウリを潰してしまった。
「痛たた。……か、カナデくんも?」
「そうだよー。おでこ痛いけど、友達だから許すよーアオイちゃん」
潰れたオウリを助け起こしながら文句を言ってるけど、その顔はもう本当の笑顔だ。
「チカくん、おでこ大丈夫? ごめんね?」
「そんなん気にすんな。だって友達だろ?」
相変わらず素敵すぎる笑顔で答えてくれたチカゼ。
まあやっぱりまだ痛いのか、それとも思い出してしまったのか。おでこはさすっていたけれど。
「九条おと――(ひっ!)……ひ、ヒナタくんも……?」
「さあ。そうなんじゃないの」
九条弟って言いかけたらめっちゃ睨まれたー!
でも確かに、友達ならちゃんと名前で呼ばなきゃだよね。今までごめんよー……。
「ツバサくん。気付くの遅くなってごめん。抱き締めてくれてまで教えてくれて。どうもありがとっ!」
「……どういたしまして(もう、あんまり抱き締めた抱き締めた言わないでよ。いろんなとこから視線がビシバシ飛んでくるんだけどっ)」
目線は合わなかったけど、ツバサもそう答えてくれた。
その横顔は、少し赤くなってるような気がしなくもない。
最後に。
「アキラくん。アキラくんとも、わたしは友達?」
葵は不安になりながらもアキラに聞いてみた。何せ奴は、本当に何を考えているかわからな――――



