すべてはあの花のために①


 少し経ってから、ツバサが急に離れて「どう?」って聞いてきた。全くもって意味がわからない。


「どう……って、え? 何が?」


 きっとこの反応は正しいだろう。わけがわからん。


「アンタ言ってたじゃない。みんなに“近付きたい”って思ったんでしょ?だから近付いた(、、、、)んじゃない」

「……え?」

「てか、このアタシが抱きしめてやったんだけど。ここまでしても気付かないのかよこの馬鹿下僕は」


 は? いや、最後悪口ですよね?
 しかも最後性格変わってません? ちょっと声野太かったんですけど。

 みたいなことを思っていたらキッ! って睨まれたので、もう考えるのは止めておいた。


「(まあもう盾突きませんけど)」


 しかし、まだ理解し切れていない葵。
 そんな彼女の肩に、ぽんと手を置いたキサが話に加わってくる。


「翼、そこまで言ったんなら最後まで言ってあげたらいいのにい」


 そしてゆっくり、おバカな下僕にでもわかるように、丁寧に丁寧に説明してくれた。


「あのね、翼はあっちゃんと友達になろうとして近付……抱き締めたのっ!」

「……ハイ?」


 まだ目が点になっている葵を知ってか知らずか、キサは説明を続ける。


「あっちゃんは、あたしたちに近付いて友達になろうとしてくれたんでしょ? でも言葉より先に体が動いちゃって、チカと圭撫をやっつけてくれたと。そう言ったよね?」


 何故か微妙に最後お礼を言われたような気がしたが、ここは敢えて突っ込むまい。


「でもツバサはね、そのアオイちゃんが失敗したやり方で、友達っていうのを教えてくれたんだよ。まあオウリは多分怒ってるだけなんだろうけど(でも別に抱き締めなくてもよかったんじゃ……)」
(※↑自分は酔って忘れています)


 いつの間に起きていたのか。ぬた~とは話さず、本来の話し方であろう口調で、カナデがそう教えてくれた。


「道明寺サン……あおいチャンが言ってた“近付く”って、まあ物理的な方じゃないと思うんだけどね。でもつばさクンは、わざと意味を履き違えて、あおいチャンの行動は間違ってないことを伝えたかった。そうだよね?(別の方法があったんじゃないかなー)」


 呼び方を変えてくれたアカネが、ツバサを見ながらそう言うけれど、当の本人はつーんとそっぽを向いてしまっている。

 あれ。ツバサさーん?
 あなたってツンデレ担当でしたっけ?


「まあ、それは単に友達っていうのを表現しただけ。てかさ、あんたオレらに怒ってくれたんでしょ」

「え」

「もうその時点で近付いてたんだって、オレらに。一歩踏み出して」

「……」


 九条弟も素っ気ないがそう付け加えてくれる。