「わたしは……」
今度は葵がゆっくり話し出す。
「さっき言ったことは本当なんだ。距離感がわからなくてどう接していいかわからない」
「…………」
「やっぱりわたし、ちょっとおかしいんだよ。友達が欲しいって思いながら、その一方で仮面着けてたりして」
「でも、それはアンタの本性を隠すために必要だったからじゃないの?」
そうフォローしてくれるけれど、葵はただ首を緩く振る。
「外そうと思えば外せるんだよ。でも、怖いんだ。怖くてそれができないんだよ」
「……どうして?」
「……こんなわたし、変……だから」
尻窄みになる言葉の最後。そんな様子にツバサは目を見開いた後、小さく笑って言葉を紡ごうとしたけれど、そのまま葵は話を続けた。
「だから、こんな変な奴だって知ってても、わたしを引き止めてまで生徒会に入れてくれたこと。すごく嬉しかったし、友達になりたいって。思った」
「……そう」
「でも、みんなと近付きたいなって思ったけど、言葉より先に身体が動いちゃった。それでチカくんとカナデくんに、たんこぶ作っちゃったし」
葵は、カナデのおでこをそっと撫でる。
そして最後に。
「友達を作るのってなかなか難しいんだね。さっそく失敗しちゃった。へへへ――……へえっ!?」
苦笑いになりながらもなんとか最後まで言い切った葵の背中に――どんっ! と勢いよく、温かい何かがぶつかった。
「(え? ……ええっ?)」
一体、何がどうしたんだ?
そう思って振り向いてみると。
「(むう)」
抱き付いているのはオウリだが、何故だろう。上目遣いでこちらを少し睨むように見つめてくる彼の口元は、ぎゅっと固く噤まれている。どうやらこれは怒っているみたいだ。……鼻血が出そう。
でも。
「お、オウリくん? どうして――ぶぶっ!」
怒っているのかと、そう聞こうと思ったら、今度は目の前にいるツバサにほっぺたを両手で挟まれ視線を合わせられる。
ツバサの表情もどうやら怒っているみたいだ。でも、それは少しやわらかい。まるで、小さい子どもを叱る時みたいだ。
「――ぐへっ」
そう思った途端、何故かツバサにも抱き締められた。
葵は何故か、オウリとツバサにサンドウィッチの具にされてしまった。
「(何が一体どうしたんだあー……)」
身動き取れない葵は、一体どうしたもんかと頭を悩ませていた。



