すべてはあの花のために①


「あら? カナの奴寝たの? 珍しいー」


 ツバサが珍獣でも見つけたような顔をして、こちらにやってきた。

 いやいや。あのね、全体重のしかかってるからね!
 助けようとか……しないだろうね。ウン、わかってる。


「どうしたの?」


 そんな目で見つめていたことに、ようやく気付いてくれたらしい。


「いや、どうしたもんかと思って」

「寝かせてやればいいじゃない。ほら、そこにソファーあるし」


 言いながらふかふかで気持ちよさそうな大きなソファーを指差すツバサ。

 そう言った彼は、一瞬何かに閃いたような顔をした。


「もう、仕方ないわね。貸しイチだから――」


 ――ね、と。
 どうやら閃いたことはそれらしい。そう言いながらも、結局は助けてくれようとしたんだろう。

 けれど彼は、最後の一語を出す手前の口のまま両手を拡げ、目を見開いたまま固まっている。それはそうだろう。



「よっこいしょっと」


 そんなツバサを余所に、葵は眠りこけているカナデをお姫様抱っこをして、すでにソファーの方へと歩き出していたんだから。

 ラクラク運んでいく葵の様子に、それぞれ違う反応を示す面々。オウリなんかは見てはいけないと思っているのか、両手で両目をばっちり押さえていた。……可愛いな畜生。


「っしょっと」


 静かにカナデをソファーに下ろし脱いだブレザーを掛けてあげると、彼が静かに薄く目を開いた。


「……、ちゃん?」

「ん? なあに?」


 彼から洩れた辿々しい声。どうやら本当に眠たいようだ。

 何か伝えたいことがあるのかも――そう思い葵は、カナデの口元に耳を近付けたのだけれど。



「……ごめんね。それから――」

「っ!?」

「……ありがと」

「(……いま。い、今何し……ええっ!?)」


 まさか、かすかな謝罪と感謝の言葉とともに、可愛いキスが落とされることになろうとは。