「あら? カナの奴寝たの? 珍しいー」
ツバサが珍獣でも見つけたような顔をして、こちらにやってきた。
いやいや。あのね、全体重のしかかってるからね!
助けようとか……しないだろうね。ウン、わかってる。
「どうしたの?」
そんな目で見つめていたことに、ようやく気付いてくれたらしい。
「いや、どうしたもんかと思って」
「寝かせてやればいいじゃない。ほら、そこにソファーあるし」
言いながらふかふかで気持ちよさそうな大きなソファーを指差すツバサ。
そう言った彼は、一瞬何かに閃いたような顔をした。
「もう、仕方ないわね。貸しイチだから――」
――ね、と。
どうやら閃いたことはそれらしい。そう言いながらも、結局は助けてくれようとしたんだろう。
けれど彼は、最後の一語を出す手前の口のまま両手を拡げ、目を見開いたまま固まっている。それはそうだろう。
「よっこいしょっと」
そんなツバサを余所に、葵は眠りこけているカナデをお姫様抱っこをして、すでにソファーの方へと歩き出していたんだから。
ラクラク運んでいく葵の様子に、それぞれ違う反応を示す面々。オウリなんかは見てはいけないと思っているのか、両手で両目をばっちり押さえていた。……可愛いな畜生。
「っしょっと」
静かにカナデをソファーに下ろし脱いだブレザーを掛けてあげると、彼が静かに薄く目を開いた。
「……、ちゃん?」
「ん? なあに?」
彼から洩れた辿々しい声。どうやら本当に眠たいようだ。
何か伝えたいことがあるのかも――そう思い葵は、カナデの口元に耳を近付けたのだけれど。
「……ごめんね。それから――」
「っ!?」
「……ありがと」
「(……いま。い、今何し……ええっ!?)」
まさか、かすかな謝罪と感謝の言葉とともに、可愛いキスが落とされることになろうとは。



