すべてはあの花のために①


 被害を受けなかった六人はというと、一体何が起こったのかと、目をパチパチしている。


「~~……っ!」


 対する攻撃を食らった二人はというと、ぶつけた額を抑えて悶絶していた。


「あ、アンタ何し――」

「何してくれてんだよ!!」
「何してくれてんの!?」


 突拍子もない葵の行動に声をかけようとしたツバサに被さるように、復活した二人がちょっと目に涙を溜めて文句を言い出した。


「アオイちゃん? どうしてこんなことしてくれちゃった〜のかな? 俺、今すんごい頭が痛いんだけど~?」

「おい! 何してくれてんだよ変態! ~~っ、こちとら今一瞬お星様見えたんだぞコラ!!」


 そしてそう畳みかけるように訴えてきた後、「ていうか!」と、二人は口を揃えた。


「なんで俺らだけなのかな〜?」
「なんでオレらだけなんだよ!」


 変なところを突っ込んできたが、二人の目は“本気”と書いて“マジ”だった。


「……ふっ。そんなの決まってるじゃないか」

「いや決まってないわよ」


 冷静に突っ込んでくれたツバサに、ちょびっと心の中でお礼を言って葵は続けた。


「それは――――一番やりやすかったからだ!」


 どうだ!
 どや顔で言ってやったゼィ☆

 けれど、みんなから無言の圧力を感じた葵は、慌てて言葉を続けた。


「いやいや、だってさ! 女の子に手を上げるわけにはいかないし、九条兄弟は後が怖いし、アカネくんオタクだし、オウリくん可愛いし!」

「いや、最後ら辺なんか違うことになってるけど……取り敢えず、あたしには手を出さないでくれるみたいでよかったわ」


 なんともまあ優しいキサが、葵のボケをちゃんと拾ってくれましたが。その顔はさっきの二人がぶつかった時の威力を見て未だ引き攣っていた。


「じゃあアキは?! なんでアキじゃねーんだよ!!」


 納得するんだねチカゼ。なんてあんたはエエ子なんや。


「(でも、なんでって言われても……)」


 そう思いながらアキラをちらっと見る。


「ん??」

「(あ~~……ね。きっとプリン食べてたんだね、オイシイヨネー……)」


 スプーンを咥えているが、その目は葵を見たりプリンを見たり。
 いいんだよー全然。プリン食べなよー。


「……はあ」


 取り敢えず。


「プリンが美味しそうだったから」


 ってことにしとこう。