すべてはあの花のために①


「だって! 糖尿病って一回なっちゃったら絶対治らないんだよ!? インスリンっていう薬とこれから一生付き合っていくことになるんだよ?! 壊死とかして足の親指とかなくなっちゃうんだよ!? めっちゃ怖いじゃん!!」


 確かにね。食事制限とかあるもんね。
 それにこの人、絶対甘いもの止める気ないしね。

 ちなみにそう診断されたのは中学の時だったらしい。
 ……中学の時から糖尿病って。一体どんな食生活してたの。末恐ろしいんですけどっ。


「オレが尊敬するアキが糖尿病なんかになって欲しくないから、何が何でも全力でお前を引き止めたっつーことだ。……別に糖尿病が怖いとか、そんなんじゃねーから」


 そんなに尊敬しているなら、先に甘いものを控えさそーね。ツンデレ可愛いねー。

 ちなみに、その年の生徒会は誰も代わりを入れず、人数が足りないまま頑張ったらしい。


「ま、そういうことだ!」


 今度はニカッとした笑顔でそう言ったチカゼ。
 その顔は、ちょっと可愛いかった。

 そんなこんなで、引き止められた理由を聞き終えた葵は、苦笑いするしかなく…………。



「「(まあ他にも理由はあるんだけど。それはまだ言わなくて(それは言わない方が)……いい、か)」」


 そんなことを思っている人がいるなんてことは、この時の葵はまだ知らない。



 時計を見ると、短針が12を回っていた。


「そうと決まれば! 新生徒会メンバー結成を祝してパーティーしよう! ってことで、隣の部屋に食事とかデザートとか準備したよ! 午後からは、道明寺さん改め葵ちゃんの歓迎会をして、みんなで親睦を深めよー!」


 と、理事長がそう言うが早いか、みんな一斉に移動し始める。

 葵はというと……。


「♪~♪」


 とても嬉しそうな顔をして、袖をつんつんと引っ張ってくるオウリに、鼻血を出しそうになっていた。



 その様子を見ていた理事長の顔が、つらそうになっていることも知らずに。