「なんでも、変な技を繰り出しながら不良くんたちをボッコボコにしたみたいじゃないか! 実は動画、私ももらったんだよ〜宝物なんだ。ちなみにPCにもすでにバックアップは取ってあるよ~」
「やめてください」
頼むからっ。今すぐ消してくれ……っ!
「(誰だ! 理事長に動画渡した犯人は……!)」
まあ大体予想がついていた葵はというと、そいつを睨み、飛びかかってやろうとしたのだが……。
「(何? 文句でもあるの? あんた文句言える立場じゃないよね? わかったらさっさと座れ下僕)」
みたいな言葉が今すぐにでも聞こえそうなぐらい九条弟の雰囲気が途轍もなく恐ろしかったので、取り敢えず大人しく席に着かざるを得なかったのだった。
「いろいろ言ったけど、桜李からそんなお願いをされて、私もとても嬉しかったんだよ。だから、君が生徒会に入ってくれてとっても嬉しいし感謝してる。それに、もう君の前で桜李はいろんな顔してるみたいだしね」
理事長はそう言いながら、隣に座るオウリの頭をわしゃわしゃーと撫でくりまわす。
恥ずかしいのか、少し頬を上気しているオウリ。そんな彼と目が合ったら、彼はもっと恥ずかしがって、理事長の腕の後ろに隠れてしまった。
思わずヨダレが出そうになっている葵に反して、理事長は慈しむように彼を見下ろしたあと、こちらへと視線を向けた。
「ありがとうね、道明寺さん」
「っ、え?」
驚きで、すぐに声が出なかった。
葵自身は、本当に何もしていない。ほぼ脅されて生徒会に入ったようなものだったから。
どう答えたらいいのかと、反応に困ってしまったけれど。
「こういう時は『どういたしまして』でしょ?」
葵のすぐ横で小さくそう教えてくれるツバサに、少しばかりの居心地の悪さを感じながら……。
「……どっ、どう、いたしまして……っ」
恥ずかしかったのと、ちょっと感動があったのと。少し潤んでしまったのを隠したくて、まぶたをぎゅっと閉じた。
そんな葵を見て、その場にいた全員がやわらかく笑っていた。



