「ん~~っ!」
……なんか、頑張っていらっしゃる。
頑張って爪先立ちして片手を伸ばしたり、思いっきりジャンプしているが、あとちょっとのところで棚の上の箱に手が届かないみたい。
「す、めらぎ、くん? 一体何を――」
しているのか聞こうとしたら。
「ゴリラのマーチが取れないっ!」
「!? ごっ……」
ゴリラのマーチだと!?
え? 何あの人。どうしちゃったの?
「ぎゃあははは! あの顔でゴリラのマーチとか!! やっばい! やっぱりウケるんですけど!」
「(むう)」
いやいやいや! そんなムスッとしなくても!
「あの。椅子……使ったらどうですか?」
「!」
まるで『そうか! その手があったか!』みたいな顔して、両手を合わせた後、その彼は嬉しそうな顔をして椅子を取りに行ったが。
「はやくっはやくっ」
一番背の高いツバサは、カナデを軽々と担いで先に獲物をゲット。棚の後ろの壁を軽く押して現れた物置に、その獲物を隠してしまった。
「(隠し扉的なやつですか!? それにもビックリだけど……)」
ちらっと見えたのは、恐ろしいほど大量のお菓子の山。……うん、見なかったことにしよう。
「(か、観察というか、いじめというか、いじりというか、何というか……)」
案の定、何も知らない皇くんはというとだ。
「――! ……。ない……」
驚いた後、ションボリしちゃったよ。
椅子に上がる前に気付けたらよかったね。せっかくキラキラした目で嬉しそうに帰ってきたのにね。
すごく彼が不憫に思えた。
「まあ、大体こんな感じね」
どや顔で言ってのけるツバサ。
うん。あなたも敵にまわさない。確かに流れてるわ、同じ血が。
「こんな感じで、昔はよくいじってたのよ」
「いやいや! いじるって言っちゃってるし! 観察どこ行った?! ていうかやめてあげてくださいよ! 見てください! 皇くん、めっちゃ悲しそうな顔してます、よ……?」
そう言いながら皇くんの方を向いたら。
「ん?」
なんか咥えてるしー。
「す、すめらぎくん? それはどこから……?」
「んんっーん、んんん~っん」
いや、何言ってるのかわかんないし。
でも嬉しいんだね~。それはわかるわ~。よかったね~。
葵にきちんと伝わってないことに気付いたのか、皇くんは咥えているいる棒を取り出し――――
「じゅぽっ!」
え? デカくね??
どうやったらそれ、口ん中に入るのー……。
出てきたのは、皇くんの顔ぐらいある、トグロを巻いたピンクと白の飴。
葵は頭を抱えた。抱えるしかなかった。



