「(めっちゃくそ可愛いぃいいい!)」
九条兄の話に、怒っているのか照れているのか。ぷく~っと膨らませた頬には赤みが差し。大きな目元からは、今すぐにでも涙がぽろっと落ちるんじゃないかと思うほど、瞳を潤ませているオウリ少年の姿が、そこにあった。
覗いていたのがバレたのか。九条兄を睨んでいたオウリは、はっ! とこちらに気付いて上目遣いでゆっくりと見上げてきたけれど……。
視線が絡むと、慌ててまた視線を九条兄へ戻すその顔が、さっきよりも赤くなっているような気がして。
「……じゅるっ」
可愛いものに目がない葵は、思いっきりそれをガン見してヨダレを存分に垂らしていた。
「おい、やべーよヒナタ。あいつニヤニヤしながらヨダレ垂らしてるぞ」
「ああ。やっぱり変態だね」
どうやらもう、変態サンに成り下がってしまったようだ。
「(にしても、変態の下僕って……)」
割と最低な扱いに、葵はちょびっと本気で泣いた。
「オウリの件は解決したかな~? じゃあ続いて俺ね~」
心で涙を流していたら、のんびりとした様子で東條くんがゆっくりと話し始めた。
「東條 圭撫、アオイちゃんと同じ高2。好きなものは女の子で、趣味はエロ本とかAV見ることなんだけど、アオイちゃんが変態ってわかったし。これからいろいろ楽しくなりそうだね〜」
「(なんかとんでもないことをさらっと言ってませんかこの人!?)」
そんな途轍もないことを世間話のように言っているカナデ。
髪色は真っ白にも見えるほど色素が薄く、気怠げに制服を着崩し、今日はその上からグレーのカーディガンを羽織っていた。
身長は170以上はあるだろうか。長い首筋から開けた胸元に、ネックレスのチェーンが見えた。
それにしても……。
「(なんか溢れ出てるから! エロい何かが!)」
その無駄に溢れる色気を、どうか今すぐ収めて欲しいと思った。
同時に分けて欲しいとも思った。
「ま、圭撫は手が早いから気を付けなねー」
しかもキサが、さらっとぶっ込んでくる始末。
……ヤバい。やっぱりやっていける気がしない。
「もう! 自己紹介だけでどうしてこんなに時間かかってるの! さっさと次行くわよ!」
すみません。九条兄。
原因は間違いなく葵であろう。脱線したからね。申し訳ない。
「九条 翼、アンタと同じ高2。趣味は……まあこんな恰好だし。可愛いものとか集めたりとか? カナと一緒にアキの観察をするのが楽しかったけど、そういえば最近ご無沙汰だわね」
そんなオカマ口調で話す九条兄ことツバサは、そりゃもうね、めちゃくちゃ美人なのですよ!
モデルさんかと思うくらいスラッとしていて、180は余裕であるんじゃなかろうか。この中では断トツで背が高い。
胸元まであるさらさらの黒髪ストレートに、左手の小指にはシルバーリング。左耳には、似合い過ぎるほど艶やかに光を放つパープルのピアスが二つついていた。
ちなみに。女子の制服を着用しておられるので、足がすっごく綺麗に見えます。
黒いブラウスのボタンを二、三個外し、リボンをだらんと首から提げ、今日はその上からクリーム色のカーディガンをお召しでいらっしゃいます。
「(わたしも、編入してきたばかりの頃は見間違えたっけ)」
彼のことは今や学校中が周知しているはずだが、たまにそのことを知らないまたは信じたくない男子生徒から、告白されることもあると聞く。その男子生徒がどうなったのかまでは……よく知らない。というか、知りたくないかも。
「(はあ。それにしてもなんて濃いメンバーなんだ)」
(※↑自分のことは棚に上げている)
それにしても観察って……そもそも何を観察するんだ? あの美貌か?
そりゃ彼らが並んだら美男美女(?)だけども!
そんな、どうでもいいことに疑問に思った葵は、観察対象に目を向けてみる。すると――――。



