すべてはあの花のために①


「ふう。……だってさ、アキくん」


 九条弟が皇くんを見ながらそう言うと、残りの全員が同じようにその視線を辿る。


「わかった」


 何故この人が一言発するだけで、こんなにも体に緊張が走るのか。



「ということで。今日からお前は生徒会の雑用係だ」

「せっ、せめて庶務って言ってえぇ……!」

「結局やるんかい!」

「は~い。庶務一名様、ごあんなあ~い」

「俺が手取り足取り腰取り教えてあげよ~っと」

「!」

「はあ。また面倒な女子が一人」

「ちょっと? どういうことかしら?」


「「ちょっとも何も……」」

「「……ねえ?」」

「ねね! 魔女っ子マミリンに似てるって言われない? 言われるよねー!」

「……?」


「……あんたら、いい加減にしろ?」





「あ、あのー……くそっ! 美味しいとこ全部もっていかれた!」

「……それじゃあ、今日からよろしく?」


 これが、高校生活残り二年の平穏だったであろう葵の日常が、ぶっ壊されてしまった瞬間だった。