すべてはあの花のために①


「おーい終わっ――」

「ぎゃはははあっ!」

「な、何してんだお前ら」

「あ。菊ちゃんおかえりー」

「はあ。はあ。はあ。……お、おかえりなさい」


 くすぐられていた葵は、いつからそうされていたのか。疲れた様子で肩で息をしていた。


「菊ちゃん聞いてよ! あっちゃん、杜真となんかあったのかって聞いても全然口を割らないんだよ!」

「いや、キサはオレといちゃいちゃしろよ。愛育めよ」

「!?!?」


 顔を真っ赤にしている間に、くすぐり地獄から解放してやる。そのまま理事長室に逃げていけと、ジェスチャーを送ると……。


「……開けた時にビックリするようなことだけはしないでくださいね」


 いちゃいちゃ発言のせいか、葵の中のキクの好感度はダダ下がり。ゴミを見るような目には、不信感しかなかった。


「……はあ。おあずけか」

「ね、ねえ菊ちゃん」

「ん?」

「あ。……愛って、どうやって育むの……?」


 抱き締めたくなる衝動を、先程の軽蔑した目を思い出しながらぐっと堪え、キクはキサの頭をぽんとやさしく撫でた。


「お前は心の準備だけしとけばいいよ。いつかのために」


 小首を傾げる彼女が、手元に戻ってきてくれた。
 ……今はもう、それだけで胸がいっぱいだから。