「おーい終わっ――」
「ぎゃはははあっ!」
「な、何してんだお前ら」
「あ。菊ちゃんおかえりー」
「はあ。はあ。はあ。……お、おかえりなさい」
くすぐられていた葵は、いつからそうされていたのか。疲れた様子で肩で息をしていた。
「菊ちゃん聞いてよ! あっちゃん、杜真となんかあったのかって聞いても全然口を割らないんだよ!」
「いや、キサはオレといちゃいちゃしろよ。愛育めよ」
「!?!?」
顔を真っ赤にしている間に、くすぐり地獄から解放してやる。そのまま理事長室に逃げていけと、ジェスチャーを送ると……。
「……開けた時にビックリするようなことだけはしないでくださいね」
いちゃいちゃ発言のせいか、葵の中のキクの好感度はダダ下がり。ゴミを見るような目には、不信感しかなかった。
「……はあ。おあずけか」
「ね、ねえ菊ちゃん」
「ん?」
「あ。……愛って、どうやって育むの……?」
抱き締めたくなる衝動を、先程の軽蔑した目を思い出しながらぐっと堪え、キクはキサの頭をぽんとやさしく撫でた。
「お前は心の準備だけしとけばいいよ。いつかのために」
小首を傾げる彼女が、手元に戻ってきてくれた。
……今はもう、それだけで胸がいっぱいだから。



