「キサとキクたちのこと、頼むよって言ったでしょ。……あんたを信用してよかった。気付いてくれるって信じてた」
「ひなたくん……」
「だからまあ、下僕にしてはよく頑張ったんじゃない?」
「っ、さいごのはいらない!」
「そう?」と楽しそうに笑う彼に、信じてくれた彼に、思わず弱音がこぼれる。
「……わたし、頑張れたのかな」
「……そうなんじゃないの? オレはキサと彼女たちのことしか考えてなかったけど、あんたは全員のこと考えたんでしょ」
「……っ」
「はいはいお疲れ様。言ったじゃん、あんたなら大丈夫だって。オレが言うんだから自信持ちなよ」
「どっから出るんだその自信はっ」
「オレにかかればこんなもんだよ」と、やはり彼は楽しそうに笑っていた。
「そういえば、MVPなら賞品があるはずだよね」
「え? 賞品?」
「ないの?」
「……ちなみに、何が欲しいの?」
「じゃあ、トーマにされたことをしてみて欲しい」
「そっ、それは無理な相談で……」
「なんで? トーマにはされたのに」
「あ、あれはその。無理矢理というか……」
「無理矢理て……」
「わたしが油断したというか……」
「油断て……」
それでも折れそうにないヒナタに、葵は叫び声を上げた。
「〜〜っ。とっ、とにかく! わたしにはできないんです……!!」
「……へえ。できないことをされたと」
「ひぃっ!」
悪魔、降臨。
「わかった。じゃあオレは、その賞品を【あんたに悪戯する権利】として有難く戴くことにする」
「ええ?! い、意味がわからないんですけど?!」
「いつどんなことするかわからないから、精々いつ来るのかビクビクしてたらいいよ」
「や、……やっぱり君は悪魔だよう!」
「お褒めのお言葉ありがとう」
「褒めてないよう!?」
こうして、葵の疑問も無事綺麗さっぱりなくなりましたとさ。
……その代わり、多くのものも失いましたとさ。ちゃんちゃん。



