すべてはあの花のために①


「キサとキクたち(、、)のこと、頼むよって言ったでしょ。……あんたを信用してよかった。気付いてくれるって信じてた」

「ひなたくん……」

「だからまあ、下僕にしてはよく頑張ったんじゃない?」

「っ、さいごのはいらない!」


「そう?」と楽しそうに笑う彼に、信じてくれた彼に、思わず弱音がこぼれる。


「……わたし、頑張れたのかな」

「……そうなんじゃないの? オレはキサと彼女たちのことしか考えてなかったけど、あんたは全員のこと考えたんでしょ」

「……っ」

「はいはいお疲れ様。言ったじゃん、あんたなら大丈夫だって。オレが言うんだから自信持ちなよ」

「どっから出るんだその自信はっ」


「オレにかかればこんなもんだよ」と、やはり彼は楽しそうに笑っていた。


「そういえば、MVPなら賞品があるはずだよね」

「え? 賞品?」

「ないの?」

「……ちなみに、何が欲しいの?」

「じゃあ、トーマにされたことをしてみて欲しい」

「そっ、それは無理な相談で……」

「なんで? トーマにはされたのに」

「あ、あれはその。無理矢理というか……」

「無理矢理て……」

「わたしが油断したというか……」

「油断て……」


 それでも折れそうにないヒナタに、葵は叫び声を上げた。


「〜〜っ。とっ、とにかく! わたしにはできないんです……!!」

「……へえ。できないことをされたと」

「ひぃっ!」


 悪魔、降臨。


「わかった。じゃあオレは、その賞品を【あんたに悪戯する権利】として有難く戴くことにする」

「ええ?! い、意味がわからないんですけど?!」

「いつどんなことするかわからないから、精々いつ来るのかビクビクしてたらいいよ」

「や、……やっぱり君は悪魔だよう!」

「お褒めのお言葉ありがとう」

「褒めてないよう!?」


 こうして、葵の疑問も無事綺麗さっぱりなくなりましたとさ。

 ……その代わり、多くのものも失いましたとさ。ちゃんちゃん。