すべてはあの花のために①


「上手くいくかはわからなかったけど、彼女に信用して欲しかったから」

「……そっか」

「それに親も、自分の子どものこと、ちゃんと知りたいでしょ」

「……。……うん。そうだね」


 一瞬眉間に皺を寄せたヒナタだったが、それもすぐに落ちたため息とともに消えた。


「まあその後、あんたたちから奪還するんだって聞いて、望んだものじゃないってわかったのと、時間と場所もちゃんとわかったから連絡したってとこ」

「それで君は、賭けに勝ったと」

「……だったら?」

「ヒナタくん」

「……何」

「ありがとうっ!」

「は?」

「そしておめでとう!!」

「うわあっ!」


 葵は思い切りヒナタに抱き付いた。


「い、いきなりなに」

「今回のMVPは、君に決定でーすっ!」


 彼が動いていなかったら、きっと成功してはいなかった。
 彼が動いたから、母親だけでなく父親まで動かすことができた。

 全員がこうして前を向いて歩けているのは、すべて彼のおかげだ。


「意味がわからないんだけど……MVPって?」

「いや~わたしも頑張ったんだけどなあ。やっぱり詰めが甘かったや。まだまだだね!」

「……よくわかんないけど、オレからも聞きたいことあるから、いい?」

「お! なになに?」

「トーマとキスしたの?」

「ぐはっっ!!」

「え?」


 あまりの衝撃に、葵は慌てて両手で顔を隠ししゃがみ込む。


「ねえ本当に? キスしたの?」

「ぐふっっ!!」

「え。……マジで?」

「……い、いえ。これは、その。ちがくて……ですね」

「何が違うの。顔が赤いこと? 耳まで赤いこと? キスしたこと?」

「ぐほっっ……!!」


 葵、衝撃に耐えきれず、ノックダウン。


「ぶはっ」

「……へ?」


 倒れ込んだ束の間、何故か上から笑い声が。


「ごめんごめん。わかった。これ以上は聞かない。その代わり」

「……? ヒナタくん?」


 そう言うや否や、倒れ込んだ葵の側にしゃがみ込んだ彼は、ぽんと葵の頭を撫でた。

 どうしたのだろうと顔を上げると、そこには予想以上にやわらかい表情を浮かべたヒナタがいて。


「お疲れ様」

「――――」


 それは、きっと一番の衝撃だった。