すべてはあの花のために①


「その時に、直接キサから聞いたのは三人だけだったかもしれないけど、その後オレらも普通に教えてもらったから」

「(なら、そこまで知っていたのに、どうして理事長は彼らの名前を言わなかったんだ……?)」

「……誰から聞いたかは知らないけど、オレらは全部を知ってたわけじゃないよ。婚約者がトーマだったこととか、トーマとは血縁者だったこととか、式の時間と場所とかは知らないし」

「(そういうことだったのか。じゃああの時は、わたしの聞き方が悪かったわけだ)」


 でも、それで疑問が解決するわけではない。

 少なくともみんなは、奪還する計画を話すまでは知らなかったと思う。だから、結婚相手がトーマだということは、その時点ではまだ知らないはず。


「(それなのに……どうして君だけは、知っているんだ)」

「……じゃあ今回は特別。よく働いたご褒美に仕方なく教えてあげる」


 その見え透いた疑問に気付いたのだろう。


「けど、このことは誰にも言わないで。特にチカとキサとキクには。わかった下僕」

「……もちろんだとも」


 彼はそう前置きしてから、ため息を吐くように告げた。


「結論から言うとオレは、キサに自分は親父さんたちの本当の家族じゃないって聞いた時から、本当の親を調べてた」

「……小さい頃から、ってこと……?」

「別に興味本位で知りたかったわけじゃない。もしキサが本当のこと知りたいって思った時に、教えてやろうと思ってただけだよ」


 連絡先その他諸々がわかったのはごく最近。
 その時にはもう、キサがトーマと血縁者だということはわかっていたそうだ。

 そして、4月になって少し経った頃。彼女に初めて連絡をした。


「そこで初めて、オレはトーマが婚約者だったことを知った」

「4月に入って……?」

「あんたはちょっとだけど聞いてるはずだよ」

「え? わたしも?」

「あんたは途中でいなくなったから知らないと思うけど……その後チカは、頑張ってキサに話してた」

「(二人が空き教室で話してた、あの会話のこと……だよね。きっと)」


 生徒会が提示した新入生歓迎会のプラン。その行き先のアンケートを回収しに回っていた時のことで、間違いはないだろうけれど。


「な、なんでそのことをヒナタくんが知ってるの……?」

「……別に。ちょうど暇してたから」

「(もしかしなくともそれって……)」


 手伝って、くれようとしていたの……?


「どっかの教室の前で止まってたから、どうしたんだろうって思って」

「……そこでヒナタくんは、わたしが知らない内容を聞いたんだね」

「ハッキリとは思い出せないけど……うん。その時初めて彼女に連絡したから、4月に入ってすぐじゃないよ」

「でも、どうしてすぐ結婚のことを連絡しなかったの?」

「知らない奴からいきなりそんなの来たら驚くじゃん。それに、頻繁に送ったらオレがあんたより先に警察行きになる」

「え?! わたしってもう、警察行くの決定なの?!」

「え。違うの」


 捕まったらこの作品、次からもうないと思うので、それだけは勘弁してください。