すべてはあの花のために①


 なんだかんだと、安全運転してくれている後部座席で、キサは楽しそうに葵の腕にむぎゅっと抱き付いていた。


「あっちゃんっ」

「なーに? キサちゃんっ」

「前に、進ませてくれてありがとう」

「え? わたしはそんな大層なことはしてないよ?」

「そんなことないよう!」

「そんなことあるある! ここまでみんなが変われたのは、みんなの気持ちがすごく強かったおかげだもん。だから、わたしはそれに逆に感謝してる。みんなが、みんなのことを大好きで、本当によかった!」

「……うん。うんっ。そうだね! じゃあ、あたしは頑張ってドロケイで勝っちゃうぞー!」

「そうだねっ!」


 後部座席の二人は笑い合いました。
 ちなみに、前に座る二人はというと……?


「(てかイチャイチャってなんだよ! なんでトーマ勝手に手出してくれちゃってんだよ……っ!)」

「(今のうちに理性掻き集めとかねえとやべーな。……マジでどうしよ)」


 みたいなことを考えていたのでした。


 そして時刻は、13時20分。


「すごいじゃないですか先生! 10分も縮められた!」

「おー。だって初めからそうだったからなー」

「「「!?」」」」


 キクは一度車を返しに桐生家へ戻るとのこと。


「ああ! きさチャンだあ!」
「~!!」

「キサちゃん会いたかったよー! アオイちゃんも寂しかったよー!」

「チカは別によかったのに」

「え? ヒナタ? オレの扱い酷くない??」

「あら、あんた肌生き生きしてない?」

「ふふふ~。翼には秘密ー!」

「紀紗」

「ん? 何、秋蘭」


 そして、アキラの「せーの」でみんなの声が一つになる。


「おかえり!」
「♪~♪」

「……! 〜〜っ、ありがとうみんな! ただいまあ!」


 こうして無事、生徒会メンバーが誰一人欠けることなく、女王様奪還作戦は大成功に終わったのでした。





 ……が、これからは別の勝負が始まります。
 キサをはじめとする生徒会メンバーは、全員途中からドロケイに参加することに。

 その後、残り約15分で、まさかの怒濤の快進撃。

 警察側はゼッケンを着け泥棒を追い詰めるのですが、現状泥棒はほぼ捕まってない状況でした。しかし生徒会が警察側に入った途端、キサの指示の元どんどんと捕まえていき、なんと全員捕まえてしまったのです。

 キサは一体何者なのか。
 どこかからやってきたリアル警察なのか。
 はたまた、ただのドロケイ好きの女の子なのか。

 それはまた別の機会――……も、ありませんので悪しからず。