すべてはあの花のために①


 そう言うや否や、トーマは両手を拡げて葵を待ちます。
 一体何を期待していたのでしょう。その期待を裏切るように、葵はトーマの足を持ち始め――。


「ええ!?」


 ぐるんっ、ぐるんっとまわした後、ひょ~いと投げ飛ばしてしまったのです。(※ジャイアントスイング)

 もちろん、何が起こったのかわからないトーマはされるがまま、取り敢えず頭は防御したまま飛ばされました。投げた葵はというと、めちゃくちゃ目がキラキラしています。

 その後、放心状態だったトーマのところへ行って、「それで? 言えたんですか?」と葵は喜々揚々とした表情で尋ねます。しかし……。


「……ねえ葵ちゃん。どうしてこんなことしたの」

「え? だって、トーマさんが今までしたことがなくて、されたら嬉しいことって言ったから……」

「だからって普通技かけないよね? なんでそんなことしたの。ドキドキな展開楽しみにしてた俺と読者に謝ってくれる?」

「(え? ドキドキ?)す、すみません?」

「あのさ、すみませんで済んだら警察はいらないんだよ知ってる?」

「ひいっ! ご、ごめんなさいっ!」


 ただ、本当に楽しみにしてたのを八つ当たりしてるみたいです。魔王様関係なく。


「……はあ(ちょっと、頬にキスとか。期待してた俺がバカみたい)」

「と、トーマさん? どうしましょう。お水か何か飲みますか?」

「いや大丈夫。だいぶ平常心取り戻したんで」

「平常心?」

「というか、技かけられて嬉しいの?」

「あれは、滅多に見ないテレビで一回見てですね。『あ~! わたしもやられたい!』って思って!」

「そ、そっか。それじゃあ仕方がない……のか?」


 トーマは頭を抱えてしまった。


「……ま。約束だしね」

「はいっ。お願いします!」

「うん。……ちゃんと話した。言えたよ俺」

「――! それはっ、本当によかったですねっ!」


 葵はとびっきりの笑顔とともに喜んだ。
 すると次の瞬間、葵は何故かトーマに引っ張り込まれ、彼の胸の中に収まっていた。