そう言うや否や、トーマは両手を拡げて葵を待ちます。
一体何を期待していたのでしょう。その期待を裏切るように、葵はトーマの足を持ち始め――。
「ええ!?」
ぐるんっ、ぐるんっとまわした後、ひょ~いと投げ飛ばしてしまったのです。(※ジャイアントスイング)
もちろん、何が起こったのかわからないトーマはされるがまま、取り敢えず頭は防御したまま飛ばされました。投げた葵はというと、めちゃくちゃ目がキラキラしています。
その後、放心状態だったトーマのところへ行って、「それで? 言えたんですか?」と葵は喜々揚々とした表情で尋ねます。しかし……。
「……ねえ葵ちゃん。どうしてこんなことしたの」
「え? だって、トーマさんが今までしたことがなくて、されたら嬉しいことって言ったから……」
「だからって普通技かけないよね? なんでそんなことしたの。ドキドキな展開楽しみにしてた俺と読者に謝ってくれる?」
「(え? ドキドキ?)す、すみません?」
「あのさ、すみませんで済んだら警察はいらないんだよ知ってる?」
「ひいっ! ご、ごめんなさいっ!」
ただ、本当に楽しみにしてたのを八つ当たりしてるみたいです。魔王様関係なく。
「……はあ(ちょっと、頬にキスとか。期待してた俺がバカみたい)」
「と、トーマさん? どうしましょう。お水か何か飲みますか?」
「いや大丈夫。だいぶ平常心取り戻したんで」
「平常心?」
「というか、技かけられて嬉しいの?」
「あれは、滅多に見ないテレビで一回見てですね。『あ~! わたしもやられたい!』って思って!」
「そ、そっか。それじゃあ仕方がない……のか?」
トーマは頭を抱えてしまった。
「……ま。約束だしね」
「はいっ。お願いします!」
「うん。……ちゃんと話した。言えたよ俺」
「――! それはっ、本当によかったですねっ!」
葵はとびっきりの笑顔とともに喜んだ。
すると次の瞬間、葵は何故かトーマに引っ張り込まれ、彼の胸の中に収まっていた。



