「そろそろお時間でございます」
係の人が二人を呼びに来た。
「「わかりました」」
新郎新婦は同時にそう言ったが、彼だけ先に行くようだ。そのあと彼らも「あたしたちはこれで失礼しますね」「い、命を狙われているので!」と、続いて部屋を出て行く。
連絡先も戴いたから、取り敢えず後で生存確認しておこう。そんでもって、喧嘩したら連絡してみよう。うん。
「お父さん、お母さん」
娘は改めて自分たちの方へと向き直る。
「どうせ、お父さんがうじうじしてたから、お母さんに慰めてもらってたんでしょう」
「うっ」
流石だな娘よ。
「言っとくけど、あたしがお父さんとお母さん以外をそう思うことなんて一生無いから! あたしにとって、たった一人のお父さんとお母さんだから! だから……自信持ってねっ」
綺麗な笑顔でそう言う。
母親に、そっくりの笑顔で。
そうして彼女もまた、会場へ向かった。
残された自分たちもしっかり涙を拭き、切り替える。全員が前へと進んだ。
さあ、偽り披露宴の始まりだ。



