部屋の中からは、三人の啜り泣く声とともに、笑い声や楽しげな声が聞こえてきていた。……これで安心だ。
「(よかった。これでもう、誰も止まってない)」
式が始まる10分前。扉が開き、中から三人が出てきた。
「もういいのか?」
「うんっ。ありがとう杜真!」
「いいえ。どういたしまして」
「ねえ杜真。今からお二人も連れて、ちょっと行きたいとこがあるんだけど」
「ん。じゃあ行こ。お前の父さん母さんのとこ」
「うんっ。でも、あたしは杜真のこともちゃんと連れて行くからね!」
「は? 意味わかんねえんだけど」
「この後わかるからいいんですー」
そして、トーマはわけがわからないまま三人を連れ、もう一度彼女の両親の控え室へと足を進めた。
披露宴開始まで、あと10分
* * *
――新婦両親の控え室。
「なあ母さん。今どんな話してるのかな」
「きっとありがとうの連発よ」
「うん。……そうだね」
「あらあなた、自信ないの? さっきはちゃんと言えたじゃない。『あの子は俺の娘だ』って。よかったわね~言えて?」
「な、なんでそんなに怒ってるの?!」
「あなたがグジグジしてるからでしょう……!」
「ひっ! すみません!」
やはり、母は強かった。
「……大丈夫だから。安心して待ってましょ?」
「そうだね。……俺は、あの子の父親だから」
すると、扉がノックされてみんなが入ってくる。どうやら、娘がみんなを連れてきたみたいだ。
そして、自分たちのところへ来て彼らの方へ向き直る。
「改めまして、あたしは桜庭紀紗。この人はあたしのお父さんの皐月で、隣はあたしのお母さんでの紅李です。あたしに、ここまでたくさんの愛情を注いでくれた、大好きな。……あたしの、大好きなお父さんとお母さんですっ」
そうやって紹介してくれた娘に、もう顔がくしゃくしゃになるのが耐えられなかった。
でも隣を見たら、妻も泣いていたから……我慢せずに、涙を流した。



