すべてはあの花のために①


 彼らが出て行った後、再び葵たちのいる別室をノックする音が聞こえた。
 ここは、今回の奪還関係者しか知らないはず。誰だろうと扉を少し開けて覗いてみると、そこには昨日の女性と挙動不審な男性が。


「(もしかして!)」


 そう思って扉を開ける。


「来てくださったんですね!」

「もちろん。約束したし?」

「どどどど、ど、どうも。ははははじめまして……」

「どうぞどうぞ! 中に入ってください!」


 中にはキクとチカゼしかいなかったので、早速通してあげることに。


「まだ、ご両親と新郎新婦のところには行ってないんだけど、先にあなたの顔が見たくてね?」

「そうなんですね! 嬉しいですっ」


 知らない人と話している葵に、キクとチカゼはぎょっとしていた。


「……あの、もしかしてなんだけど」

「はいそうです! 彼らがキサちゃんの幼馴染みで奪還する人たちです~!」


 そんなことをさらっと言っていいのかと、二人は怪訝な顔付きだ。


「そうなのね。……ありがとう、あの子のそばにいてくれて。きっと嬉しかったと思う。とても楽しかったと思う。すごく、心強かったと思う。あたしたちは何もできなかったも同然だから、本当に感謝してるわ。本当に……ほんとうに。ありがとう」


 彼女と一緒に、隣の男性も深く深く頭を下げた。
 何となくわかったのだろう。二人はどうすればいいか悩んでいるようだったけれど。


「「……どう、いたしまして?」」


 ぎこちない幼馴染みに、彼らはくしゃっと笑った。


 披露宴開始まで、あと40分