すべてはあの花のために①


 徳島某ホテル。本日ここで、桐生家杜真と桜庭家紀紗の結婚披露宴が執り行われる。
 キサ母の手回しによりすんなりと入ることができた葵たちは、ぞろぞろと両者の関係者がホテルへと入って来る様を、大きな窓から見下ろしていた。


「首尾は順調かな」

「はいっ。ばっちりですよ!」


 待機していた別室の扉が開く。正装に身を包んだ両家の父母が、忙しいのに声をかけに来てくれたようだ。


「はああ。オレ、やりたくないんだけど」

「どうしてだチカくん! なんでなんだ!」

「そうだぞチカ。……オレだってできることならやりたくねえよ」

「お前はまだいいじゃねーかよ」

「ま、この役は誰にも譲れねーんだわ、すまんね」

「はいはい。わかったから」


 そんな葵たちのやりとりを楽しそうに見ていたキサ母――アカリが、パチンと手を叩いた。


「じゃあ、最後にもう一度確認ね?」


 式は11時に開始。
 中からの指示が出るまで待機。
 OKが出たら出会場内に侵入して女王様を奪還。


「奪還でき次第、もうそのまま学校に帰っちゃって大丈夫よ。後はこちらに任せなさい。……みんな、必ず成功させるわよ!」

「はいっ!」
「おうっ!」
「おー」


 披露宴開始まで、あと60分