徳島某ホテル。本日ここで、桐生家杜真と桜庭家紀紗の結婚披露宴が執り行われる。
キサ母の手回しによりすんなりと入ることができた葵たちは、ぞろぞろと両者の関係者がホテルへと入って来る様を、大きな窓から見下ろしていた。
「首尾は順調かな」
「はいっ。ばっちりですよ!」
待機していた別室の扉が開く。正装に身を包んだ両家の父母が、忙しいのに声をかけに来てくれたようだ。
「はああ。オレ、やりたくないんだけど」
「どうしてだチカくん! なんでなんだ!」
「そうだぞチカ。……オレだってできることならやりたくねえよ」
「お前はまだいいじゃねーかよ」
「ま、この役は誰にも譲れねーんだわ、すまんね」
「はいはい。わかったから」
そんな葵たちのやりとりを楽しそうに見ていたキサ母――アカリが、パチンと手を叩いた。
「じゃあ、最後にもう一度確認ね?」
式は11時に開始。
中からの指示が出るまで待機。
OKが出たら出会場内に侵入して女王様を奪還。
「奪還でき次第、もうそのまま学校に帰っちゃって大丈夫よ。後はこちらに任せなさい。……みんな、必ず成功させるわよ!」
「はいっ!」
「おうっ!」
「おー」
披露宴開始まで、あと60分



