すべてはあの花のために①


「それじゃあオレたちは隣の部屋にいるから、何かあれば呼んでくれ」


 朝倉先生はそう言って、理事長とともに退出していってしまった。


「さてと」


 そう切り出したのは桜庭さんだ。


「あ、どうして? って顔してるね、道明寺さん」

「はい、そうですね。皆さんと話をする理由が特に思いつかないので……」


 何故だろう。『もし断ったら連帯責任……』なんて文言でもあっただろうか。

 逃がしてくれない状況に、少しばかり心細くでもなったのか。無意識の間に後ろへ下がっていると、誰かにぶつかってしまったと同時、肩にぽんと手が乗っかった。


「理由? それは、アオイちゃんに生徒会に入ってもらいたいからだよ~?」


 背後に立っていたのは、またいつの間にか距離を詰めていたらしい東條くん。
 その彼から自然に距離を取り直して、葵は頭を下げた。


「ですが、先程も申し上げた通りわたしは生徒会には入りません。引き留めていただいているのに、ごめんなさい。(ちょっと言い方がキツくなってしまったけど、持ち前の演技力で申し訳なさをアピール! よくやった! よく頑張ったぞわたし! てか今、アオイちゃんって言った? 言ったよね! いやほおーいっ!)」


 こんな表と裏で言ってることと考えてることがバラバラでも、葵にとってはお手の物。
 ……いや。もう、慣れたんだ。