「それじゃあオレたちは隣の部屋にいるから、何かあれば呼んでくれ」
朝倉先生はそう言って、理事長とともに退出していってしまった。
「さてと」
そう切り出したのは桜庭さんだ。
「あ、どうして? って顔してるね、道明寺さん」
「はい、そうですね。皆さんと話をする理由が特に思いつかないので……」
何故だろう。『もし断ったら連帯責任……』なんて文言でもあっただろうか。
逃がしてくれない状況に、少しばかり心細くでもなったのか。無意識の間に後ろへ下がっていると、誰かにぶつかってしまったと同時、肩にぽんと手が乗っかった。
「理由? それは、アオイちゃんに生徒会に入ってもらいたいからだよ~?」
背後に立っていたのは、またいつの間にか距離を詰めていたらしい東條くん。
その彼から自然に距離を取り直して、葵は頭を下げた。
「ですが、先程も申し上げた通りわたしは生徒会には入りません。引き留めていただいているのに、ごめんなさい。(ちょっと言い方がキツくなってしまったけど、持ち前の演技力で申し訳なさをアピール! よくやった! よく頑張ったぞわたし! てか今、アオイちゃんって言った? 言ったよね! いやほおーいっ!)」
こんな表と裏で言ってることと考えてることがバラバラでも、葵にとってはお手の物。
……いや。もう、慣れたんだ。



