……驚いた。どうして彼女が、そのことを知っているのだろうか。
「ど、どうしてそのことを……?」
「じゃああたしも話す前に質問させて欲しいんだけど、桐生が嫌いなはずなのに、どうしてあなたたちを家に上げたと思う?」
これは、本当にわからなかった。
葵は言葉にすることもできなかったが、トーマが「まさか……」と、可能性の低い呟きを落とす。
「(流石に、それはないと思いますけど……)」
だとしても、どうやって情報を手に入れる?
テレビ? いや、そんな情報は流れていないはずだ。
インターネット? まずネットには流さないだろう。
携帯? スマホ? ……なら、誰かとやりとりしていたことになる。
でも彼女は桐生から縁を切られ、桜庭という名前も知らなかった。
一体誰だ。そんなことができるのは。
「(少なくとも、こちら側の事情を知っていないと……――え。いやいや、まさか……ねえ?)」
一つの可能性に行き着いたものの、それだけでは不確か。
ひとまず今は、彼女がどうしてそのことを知っているのか聞こう。
「わたしたちが、来ることを知っていた?」
「それだったら早くに家に上げてる。そうだとしても、桐生の名前を聞いたら即行帰してる」
「ではもうすでに、明日のことは誰かに聞いていた?」
「うん。その通り」
やっぱりそうだ。
「差し支えなければ、どこで誰から、どんな情報を聞いたのか。教えていただくことは可能ですか……?」
「んー。少し差し支えるから、名前は伏せるね」
連絡が来たのはこの4月。彼女の子と桐生分家の子との、結婚が決まったというメッセージが届いたのが、全ての始まりだったという。
「最初はてっきり悪戯か何かだと思ったし、それに返信はしていない。ただ、本当にたまに報告が来ていただけ。それから……」
悩んだ彼女は一瞬だけ目を伏せる。
けれど、言うことにしたのか。ゆっくりと視線を持ち上げた。
「最後に届いたのは昨日。それには日時と場所。それから、この式が望まれたものではないこと。本当に愛している人が壊しに行くことが書いてあった。そして、これをあの子の本当の父親にも送ってることもね」
「え!?」
「なっ……」
もしかしたらトーマも、父親までは知っていたのかもしれない。しかしまさか、桐生の家でもない人にも情報を渡しているなんて。
「(わたしが掴めたのは彼女だけだった。その人は父親までちゃんと知っていたのか)」
正直、驚きの連続だった。
「これが、あたしが知ってること全て。ごめんね。何も知らないなんて言っちゃって」
「い、いえ」
「ま、知っているのは明日そういうことがあるってだけ。でもまさか、桐生くん本人もうちに来るとは、流石に思わなかったみたいね」
……あれ?
「もしかして、わたしが来ることはご存じだったんですか?」
「あ」
ついうっかり。
でも、どこか嬉しそうな顔。
「これ言っちゃいけなかったんだけど……ま、バレたなら仕方ない。賭けは、あたしの負けだしね」
「か、賭け?」
「ふふ。最後にね? こう書いてあったの」



