すべてはあの花のために①


 ……驚いた。どうして彼女が、そのことを知っているのだろうか。


「ど、どうしてそのことを……?」

「じゃああたしも話す前に質問させて欲しいんだけど、桐生が嫌いなはずなのに、どうしてあなたたちを家に上げたと思う?」


 これは、本当にわからなかった。 
 葵は言葉にすることもできなかったが、トーマが「まさか……」と、可能性の低い呟きを落とす。


「(流石に、それはないと思いますけど……)」


 だとしても、どうやって情報を手に入れる?

 テレビ? いや、そんな情報は流れていないはずだ。
 インターネット? まずネットには流さないだろう。
 携帯? スマホ? ……なら、誰かとやりとりしていたことになる。

 でも彼女は桐生から縁を切られ、桜庭という名前も知らなかった。

 一体誰だ。そんなことができるのは。


「(少なくとも、こちら側の事情を知っていないと……――え。いやいや、まさか……ねえ?)」


 一つの可能性に行き着いたものの、それだけでは不確か。
 ひとまず今は、彼女がどうしてそのことを知っているのか聞こう。


「わたしたちが、来ることを知っていた?」

「それだったら早くに家に上げてる。そうだとしても、桐生の名前を聞いたら即行帰してる」

「ではもうすでに、明日のことは誰かに聞いていた?」

「うん。その通り」


 やっぱりそうだ。


「差し支えなければ、どこで誰から、どんな情報を聞いたのか。教えていただくことは可能ですか……?」

「んー。少し差し支えるから、名前は伏せるね」


 連絡が来たのはこの4月。彼女の子と桐生分家の子との、結婚が決まったというメッセージが届いたのが、全ての始まりだったという。


「最初はてっきり悪戯か何かだと思ったし、それに返信はしていない。ただ、本当にたまに報告が来ていただけ。それから……」


 悩んだ彼女は一瞬だけ目を伏せる。
 けれど、言うことにしたのか。ゆっくりと視線を持ち上げた。


「最後に届いたのは昨日。それには日時と場所。それから、この式が望まれたものではないこと。本当に愛している人が壊しに行くことが書いてあった。そして、これをあの子の本当の父親にも送ってることもね」

「え!?」
「なっ……」


 もしかしたらトーマも、父親までは知っていたのかもしれない。しかしまさか、桐生の家でもない人にも情報を渡しているなんて。


「(わたしが掴めたのは彼女だけだった。その人は父親までちゃんと知っていたのか)」


 正直、驚きの連続だった。


「これが、あたしが知ってること全て。ごめんね。何も知らないなんて言っちゃって」

「い、いえ」

「ま、知っているのは明日そういうことがあるってだけ。でもまさか、桐生くん本人もうちに来るとは、流石に思わなかったみたいね」


 ……あれ?


「もしかして、わたしが来ることはご存じだったんですか?」

「あ」


 ついうっかり。
 でも、どこか嬉しそうな顔。


「これ言っちゃいけなかったんだけど……ま、バレたなら仕方ない。賭けは、あたしの負けだしね」

「か、賭け?」

「ふふ。最後にね? こう書いてあったの」