「(でも、本当にこれでよかったのだろうか)」
自分で言っておきながらもやもやした気分に。けれど葵が首を捻っている間に、バスが目的地へと着いてしまった。
「(あ! またお金!)」
そう思った時にはもう遅く、彼は二人分を払ってさっさと降りてしまった。払わせる気は、最初からなかったのだろう。諦めるしかない。
「トーマさん。その、あんなこと言っておいてなんなんですが、本当にキサちゃんに伝えるんですか?」
「あなた、何を仰ってるんですか」
「ですよね……」
「……大丈夫。紀紗にはもちろん言うけど、先に菊にも言うからさ」
「……わかりました」
「そんな顔しなくていいって。長過ぎた片想いは、そろそろ上書きしたいと思ってたところだから」
「わっ、わたし、トーマさんには絶対幸せになって欲しいなって思います。本当に、人一倍やさしい人だから」
「……じゃあ、ありがとうってことで」
「はいっ!」
そして笑顔を浮かべる二人は、目的地のマンションへと到着したのだった。



