有無を言わさぬ物言いに、ひとまず今は彼の後をついて行くことに。
「それで。どうしてそこに行くの」
「…………」
「ねえなんで」
「(あ、圧がすごい……)」
「無視とはいい度胸だねえ」
「ひええ……っ!」
おかしいな。さっきと立場が逆転してない?
「あのさ、俺別に怒ってないんだけど」
「え? そうなんですか?」
「反応が正直過ぎてムカつく」
「ご、ごめんなさい……」
「……それで? どうしてそこに行くの。誰に会いに行くの」
「……トーマさん、ご存じなんじゃないですか」
まあねと、そう言う彼には、目的地だけで葵の目的はバレてしまったらしい。
電車が来たので、それに一緒に乗り込んだ。
「だから、どうしてそこに行くのかって聞いてる」
「では反対に、あなたは何故そこには行かなかったんですか」
「質問してるのは俺だけど」
「じゃあ答えますが、わたしはその人にも前に進んで欲しいと思っているからです。……それで、どうしてあなたは、今まで行かなかったんですか? ちゃんと、誰がどこにいるのかご存じなのに」
じっと見つめ返してきていた瞳は、やがてゆっくりと外れ、窓の外の景色へと流れていった。
「俺は、向こうから動いてくれるのを待っていた。心の準備ができたら、いつでもすぐに行けるようにしてた。だから、まだ行ってはいなかった」
「……わたしの、邪魔をするんですか」
「するよ」
彼は、そう答えた途端開いた電車の扉から、葵を無理矢理引き摺り降ろした。
「な、何するんですかっ!」
「何って、降ろしてあげたんだけど」
「だからって、どうしてこんな所で……え?」
「ほら、時間ないんでしょ」
彼が降ろしたのは目的地の駅だ。……あの流れだったら普通、完全に着く前に降ろされてるパターンでしょ。
「ど、どうして。邪魔するんじゃないんですか?」
「するよ? 君が変なことを言うようなら」
それならそうと、最初から言ってくれたらいいのに……あれ?
「あの、一緒に行ってくれるんですか?」
「そのつもりだけど……何」
「あ、ありがとうございます! 方向音痴なんでとっても助かります!」
「……そ。それはそれは、俺がいてよかったね」
「はいっ!」
「……はあ」



