すべてはあの花のために①


 有無を言わさぬ物言いに、ひとまず今は彼の後をついて行くことに。


「それで。どうしてそこに行くの」

「…………」

「ねえなんで」

「(あ、圧がすごい……)」

「無視とはいい度胸だねえ」

「ひええ……っ!」


 おかしいな。さっきと立場が逆転してない?


「あのさ、俺別に怒ってないんだけど」

「え? そうなんですか?」

「反応が正直過ぎてムカつく」

「ご、ごめんなさい……」

「……それで? どうしてそこに行くの。誰に会いに行くの」

「……トーマさん、ご存じなんじゃないですか」


 まあねと、そう言う彼には、目的地だけで葵の目的はバレてしまったらしい。

 電車が来たので、それに一緒に乗り込んだ。


「だから、どうしてそこに行くのかって聞いてる」

「では反対に、あなたは何故そこには行かなかったんですか」

「質問してるのは俺だけど」

「じゃあ答えますが、わたしはその人にも前に進んで欲しいと思っているからです。……それで、どうしてあなたは、今まで行かなかったんですか? ちゃんと、()どこ(、、)にいるのかご存じなのに」


 じっと見つめ返してきていた瞳は、やがてゆっくりと外れ、窓の外の景色へと流れていった。


「俺は、向こうから動いてくれるのを待っていた。心の準備ができたら、いつでもすぐに行けるようにしてた。だから、まだ行ってはいなかった」

「……わたしの、邪魔をするんですか」

「するよ」


 彼は、そう答えた途端開いた電車の扉から、葵を無理矢理引き摺り降ろした。


「な、何するんですかっ!」

「何って、降ろしてあげたんだけど」

「だからって、どうしてこんな所で……え?」

「ほら、時間ないんでしょ」


 彼が降ろしたのは目的地の駅だ。……あの流れだったら普通、完全に着く前に降ろされてるパターンでしょ。


「ど、どうして。邪魔するんじゃないんですか?」

「するよ? 君が変なことを言うようなら」


 それならそうと、最初から言ってくれたらいいのに……あれ?


「あの、一緒に行ってくれるんですか?」

「そのつもりだけど……何」

「あ、ありがとうございます! 方向音痴なんでとっても助かります!」

「……そ。それはそれは、俺がいてよかったね」

「はいっ!」

「……はあ」