「…………」
いきなり話が擦れたので、彼は相当驚いている。
けれど、さっきまで表情も崩さなかった彼が反応した。それは、少しだとしても届いてる証拠だった。
「わたしってば言葉より先に手が出ちゃうもんで。チカくんなんかは一番被害被ってますね。今まで、たくさん怒ってきましたから。あ、そう言えばサツキさんもビンタしかけたんでした。もう本っ当に今回の男共はとんだヘタレてばかりだったので、アカリさんとも今回の奪還作戦が終わったら、キサちゃんと一緒にボコボコにしようねって約束したんですー。その中にあなたを入れられないのが個人的に悔しくてしょうがないですが、まあそれは良しとしましょう。よかったですね、手が出なくって!」
時刻は13時前を指していた。
「わたし今日、別の所にも行かないといけなくて。でもせっかくですし、もう少しだけ」
最初はチカくん。彼の話を聞いたら、全然キサちゃんと話がてきてなくて。
だから彼には、たくさん話して、相手に届くまで、最後まで諦めないでって。
「そう言って、彼の背中を押してあげました」
「…………」
次に先生。彼に至っては、本当にとんだくそったれのヘタレ野郎でした。どうしてこの状況になったのか尋ねたら、彼は『オレが変わらなかったから』って。だからわたしは、『好きな気持ちは変わってはいけないものだから、それでいいんです』って。『あなたはただ、勇気がなかっただけなんです』って。
「そう教えてあげました。そうして最後に」
――あなたが大好きな人たちが、あなたの話を聞かないわけないでしょう?
「そう言って、彼に勇気をあげました」
「…………」
最後はサツキさん。彼は『何もしてやれなかった』『何もできない自分に腹が立つ』と、そう言っていました。
だからわたしは、『愛情を注いだから、今彼女はここにいないんだ』『何もできないんじゃなくてしようとしていないだけなんだ』と。
「そう教えてあげました。そして、これは先生にも言ったんですけど……」
――人を動かすなんて、気持ち一つで十分だ。
「そう怒って、彼をビンタしかけました」
実際に彼の話を聞いたわけじゃない。もしかしたら、見当違いのことを言っているのかも。
「(でも、ちょっとだけ……)」
最後まで聞いてくれた彼の瞳は、少しだけ揺れていた気がした。



