「それはそうと。今トーマさんとキサちゃんはどちらに?」
「あの子たちはもう桐生の本家にいるんだよ」
「まだ、正式に婚約したわけではないですよね?」
「本家に親戚を集めて、挨拶とか打ち合わせをしているんだと思うよ」
そして彼らは正式に婚約次第、そのまま本家で暮らす手筈になっているそうだ。
「では、わたしたちがこちらに来ていることは、トーマさんしか知らないということですね」
「その通り」
それならここにいる間、本家はもちろんキサにもバレる心配はなさそうだ。
「それともう一つ。一応知っておきたいと思ってですね」
「何かな」
「ナツメさんたちは、どのようにして本家を抑え込むのかなと」
「……あ、ああ。うん。そ、そのこと……ね」
「うーんと、えーっと。……ね?」
何か可笑しなことでも言ったのか、彼らの歯切れが急に悪くなって……。
「し、知らない方が身のためだと、思うんだけどな……」
「うん。……多分命に関わると思うわ」
目を泳がせまくっているトーマの父母に加わり、キサ父母もそんなことを言う。チカゼとキクは、何となくわかってしまったのか、顔がすっかり青ざめていた。
首を傾げていると、キサ母がそっと耳打ちした。
「あのね? あたしたちは、あなたが本当に味方でよかったと思ってるの」
「……ありがとうございます?」
「桐生にもね、絶対に敵に回しちゃいけない奴がいるのよ」
「と、いうと?」
「今後のためにも言っておくけれど、……トーマの敵にだけは、絶対にならない方があなたの身のためよ」
「……ま、まさかとは思いますが」
「実はそのまさかでねえ……」
両家父母曰く。どこで調べたのか、本家にとって都合の悪いことを全て公表する気なのだという。
「そ、それは……」
末恐ろしいですね。
実のご両親でさえ、震え上がらせるだなんて。
「(そこまで言われたら、逆に早く会いたくなるなあ)」
怖いもの見たさとは、こういうことを言うのだろう。
でも、彼にだけは弱みを握られないようにしよう。うん。絶対に。



