「……?」
葵の手も微かに震える。様子がおかしいことに気付いたのか、ヒナタは窺うようにこちらを見ていた。
すると、何となく葵の気持ちを察したのか。いつの間にか葵の手は、反対にヒナタの手に包み込まれていた。
「(ううっ、そんなことしないでよう……)」
このままでは弱音に気付かれてしまうと、葵は慌てて背中に両手を隠したが、それももう遅かったよう。葵の顔は弱気で暗くなっていた。
「あんたこれから奪還しに行くのに、そんな情けない顔でいいの」
沈黙がとても居心地悪い。耳が……痛い。
しばらくして、ヒナタから大きなため息が洩れる。呆れられたかなと、思った。けれど、すっくと立ち上がったヒナタは、そんな葵を見下ろした。
「あんたが言えないなら、オレが言ってやる」
――あんたは大丈夫。ちゃんと、チカとキクとトーマと一緒にキサを連れて帰る。絶対に。
「……怖くなんかないから」
「――!」
「だから自信を持って。あんたなら絶対大丈夫。だから、――行ってこい下僕」
正直、最後のはいらないと思った。……でも。
――ぱちんっ!
葵は、自分の頬に思い切り活を入れる。
「ありがとうヒナタくん。さっきは言えなくてごめん。絶対にキサちゃんを連れて帰ってくるよ! だから、安心して待ってて!」
――行ってきますっ!
鞄を背負った葵は、自信溢れる笑顔とともにそう宣言し、徳島へと足を進めたのだった。



