すべてはあの花のために①


 ……悪夢だ。嫌な記憶を思い出した。


『残業確定前に怖くなって飛び出しちゃった君たちが、ヒーロー戦隊ものの……確か、センムーだっけ? それのモノマネをしてただけって気付いたのは、結構経ってからだったよね』


 は?


『相当様になってたんだろうね。ちゃんとわかった今でも女王様の命令に背かないのは、あの時の彼女がよっぽど怖かったからなのかな』


 あんた、誰だよ。


『それとも自分たちが、バッタだのダンゴムシだのカマキリだのと、同等の扱いされてたから? 名指しされてたもんね、虫に向かって』


 いや、それ普通に黒歴史なんだけど。
 ていうかマジで誰。


『ん? ああ、ごめんね。ただの使いの者だよ』


 そのただの使いが、一体何の用。
 さっきから何が言いたいわけ。


『君も好きだよね』


 何を……ああ、もしかして戦隊もののこと?
 それは好きだったよ。世代だし。でも、どちらかというと悪の結社の方が――


『いやいや違うよ』


 君も、好き――でしょう?