こんな、小っ恥ずかしいことになったなんて絶対言えねーわと。父ちゃん母ちゃんには、「別に大したことしてねーよ」と、何も言わないでおいた。オレの気持ちなんてそのうちすぐにバレるけど。
それから部屋から出てきたあいつは、父ちゃん母ちゃんの無事な姿を確認したのか。涙目になりながら抱き付いていった。
「あのね。三人に、きいてほしいことがあるの」
その後キサ本人からオレらは、自分が本当は父ちゃんと母ちゃんの子どもではないことを聞いた。オレらには、知ってて欲しかったからってさ。
オレらはそんなの関係ないって。今まで通り、このメンバーで楽しく遊んでた。
「けいさつは女子な! 男子はどろぼう!」
「(チビどもは元気だなあ)」
いつだったか。あいつらとその友達がどろけいをしようとしてるところに、たまたま通りかかったことがある。
「ええー」
「なんだよさくらば。いやならおまえはいれてやんねーぞ!」
「(……はあ。たく、世話の焼ける)」
そんな馬鹿なことを言ったガキがいたもんだから、ついつい口が出た。
「別に、遊ぶ時まで分かれなくていいんじゃねーの」
「! きくちゃん! きくちゃんもいっしょにやろ!」
「あ? バカ。受験生を誘うな」
「やだ! きくちゃんもするの!」
「(……どんだけ手抜いたらいいんだよ)」
ま、女王様には逆らえねーわなと。思っている横で、さっきのチビがこちらをじっと見ていた。ま、面白くはないわな。
けど……悪いな。こっちが先なんだわ。
「あんま、好きな子いじめんなよ」
「……?! なっ!」
それからというもの、オレのまわりはいつも騒がしかった。
幼馴染みの、トーマとキサとチカ。キサと同い年のアキラ、カナデ、ツバサ、アカネ。チカと同い年のヒナタとオウリ。それから、オウリのおまけのミノルさん。みんなで、それはもうよく遊んだ。それこそ母ちゃんたちが、いい加減帰って来いと言うまで。
「菊ちゃん菊ちゃん! ドロケイしよ!」
「お前、よくもまあ飽きねーな」
そしてオレを見つける度、あいつはことあるごとに誘ってきた。
「え? だって、いろんな子と友達になれるもん!」
「そうかよ」
何がそんなに嬉しかったんだか。
「(というか、小学生相手に手を出すのは流石に不味い)」
まわりにちびっ子たちがたくさんいたからか。自然と教師を目指していたオレはその後、中学を卒業し公立高校へ。一人暮らしを始め、父が残してくれた金銭にはあまり手を付けまいと、アルバイトを何個も掛け持ちした。
この頃にはもう、自分の気持ちにはちゃんと気付いていたし、いい加減にもう整理できていたと思う。



