すべてはあの花のために①


 こんな、小っ恥ずかしいことになったなんて絶対言えねーわと。父ちゃん母ちゃんには、「別に大したことしてねーよ」と、何も言わないでおいた。オレの気持ちなんてそのうちすぐにバレるけど。

 それから部屋から出てきたあいつは、父ちゃん母ちゃんの無事な姿を確認したのか。涙目になりながら抱き付いていった。


「あのね。三人に、きいてほしいことがあるの」


 その後キサ本人からオレらは、自分が本当は父ちゃんと母ちゃんの子どもではないことを聞いた。オレらには、知ってて欲しかったからってさ。
 オレらはそんなの関係ないって。今まで通り、このメンバーで楽しく遊んでた。


「けいさつは女子な! 男子はどろぼう!」

「(チビどもは元気だなあ)」


 いつだったか。あいつらとその友達がどろけいをしようとしてるところに、たまたま通りかかったことがある。


「ええー」

「なんだよさくらば。いやならおまえはいれてやんねーぞ!」

「(……はあ。たく、世話の焼ける)」


 そんな馬鹿なことを言ったガキがいたもんだから、ついつい口が出た。


「別に、遊ぶ時まで分かれなくていいんじゃねーの」

「! きくちゃん! きくちゃんもいっしょにやろ!」

「あ? バカ。受験生を誘うな」

「やだ! きくちゃんもするの!」

「(……どんだけ手抜いたらいいんだよ)」


 ま、女王様には逆らえねーわなと。思っている横で、さっきのチビがこちらをじっと見ていた。ま、面白くはないわな。

 けど……悪いな。こっちが先なんだわ。


「あんま、好きな子いじめんなよ」

「……?! なっ!」


 それからというもの、オレのまわりはいつも騒がしかった。
 幼馴染みの、トーマとキサとチカ。キサと同い年のアキラ、カナデ、ツバサ、アカネ。チカと同い年のヒナタとオウリ。それから、オウリのおまけのミノルさん。みんなで、それはもうよく遊んだ。それこそ母ちゃんたちが、いい加減帰って来いと言うまで。


「菊ちゃん菊ちゃん! ドロケイしよ!」

「お前、よくもまあ飽きねーな」


 そしてオレを見つける度、あいつはことあるごとに誘ってきた。


「え? だって、いろんな子と友達になれるもん!」

「そうかよ」


 何がそんなに嬉しかったんだか。



「(というか、小学生相手に手を出すのは流石に不味い)」


 まわりにちびっ子たちがたくさんいたからか。自然と教師を目指していたオレはその後、中学を卒業し公立高校へ。一人暮らしを始め、父が残してくれた金銭にはあまり手を付けまいと、アルバイトを何個も掛け持ちした。

 この頃にはもう、自分の気持ちにはちゃんと気付いていたし、いい加減にもう整理できていたと思う。