葵がキサ父の方を向くと、彼は恐怖という恐怖で震え上がっていた。
「わたしが何故あなただけに怒ってるか、おわかりいただけたでしょうか。確かに、お母様は今まで動こうと思っても動けなかったかも知れない。でも、昨日の先生から電話をもらってから行動は起こしていたんです。……どうして今まで動かなかったのかというと、あなたからの言葉を行動を待っていたんですよ。キサちゃんも愛してますが、あなたのことも愛しているから。それなのに……何ですか。こんなにも近くに心強い味方がいるのに気付きもしない、動こうともしない。ここの男どもはヘタレの集団なのか! ええ?!」
「すっ、すみませ」
「謝ってる暇があったら、さっさとキサちゃん奪還計画を立てようって言ってんですよ! 恐らくあなたは、先生がもう一つ行動を起こしてることを知らないでしょうね? きっと、お母様なら予想はしてるんじゃないかと思うんですけど――」
「ふんふふ~ん」
「ほらあ! もうわかってるじゃないですか! もう婚約者さん側とも奪還計画は進んでるんですよ! ……さあ、あなただけです。あなたはこれからどうするんですか」
そう言うと、彼はさっきまで縮こまっていた背筋をスッと伸ばす。そして、震え上がる体に活を入れながら。
「俺の娘を取り戻すぞ」
そう、力強く言った。……が。
「何もしなかった、何も気付かなかった、何もわからなかった分際であなた、よくもまあ俺のだなんて言えますね。残念ですが、あの子はあたしの娘なので。あの子が帰ってくるまでに、自信を持って俺のって言えるようになるといいですねえ。ええ?」
「すみませんごめんなさい俺が全部悪いです」
男たちは、思いました。
「「「(この作品、滅茶苦茶女性陣強くない?!)」」」
……と。
ま、ヘタレな君たちが全部悪いってことで。



