すべてはあの花のために①


 葵がキサ父の方を向くと、彼は恐怖という恐怖で震え上がっていた。


「わたしが何故あなただけに怒ってるか、おわかりいただけたでしょうか。確かに、お母様は今まで動こうと思っても動けなかったかも知れない。でも、昨日の先生から電話をもらってから行動は起こしていたんです。……どうして今まで動かなかったのかというと、あなたからの言葉を行動を待っていたんですよ。キサちゃんも愛してますが、あなたのことも愛しているから。それなのに……何ですか。こんなにも近くに心強い味方がいるのに気付きもしない、動こうともしない。ここの男どもはヘタレの集団なのか! ええ?!」

「すっ、すみませ」

「謝ってる暇があったら、さっさとキサちゃん奪還計画を立てようって言ってんですよ! 恐らくあなたは、先生がもう一つ行動を起こしてることを知らないでしょうね? きっと、お母様なら予想はしてるんじゃないかと思うんですけど――」

「ふんふふ~ん」

「ほらあ! もうわかってるじゃないですか! もう婚約者さん側とも奪還計画は進んでるんですよ! ……さあ、あなただけです。あなたはこれからどうするんですか」


 そう言うと、彼はさっきまで縮こまっていた背筋をスッと伸ばす。そして、震え上がる体に活を入れながら。


「俺の娘を取り戻すぞ」


 そう、力強く言った。……が。


「何もしなかった、何も気付かなかった、何もわからなかった分際であなた、よくもまあ俺の(、、)だなんて言えますね。残念ですが、あの子はあたしの娘なので。あの子が帰ってくるまでに、自信を持って俺のって言えるようになるといいですねえ。ええ?」

「すみませんごめんなさい俺が全部悪いです」


 男たちは、思いました。


「「「(この作品、滅茶苦茶女性陣強くない?!)」」」


 ……と。
 ま、ヘタレな君たちが全部悪いってことで。