葵が言わんとしていることに、キサ父は言葉が出ないようだった。
「あなたは何もできなかったわけじゃない。何もしようとしていないだけです。お母様と結婚させてもらったこと? キサちゃんと家族になることを許してもらったこと? 婿養子だから? そんな理由で、あなたは何もしてやれないだなんてほざいたんですか。あなたは、いつ彼女へ踏み込もうとしましたか? してませんよね? 彼女たちを追い込んだ本家が憎い、許せない。彼女たちを心の底から愛している。それだけ大きな気持ちを持っていながら、なんであなたは何もしてないんだ!」
葵はそのまま、キサ父の胸倉を掴む。
「違いますか? 違いませんよね。少なくともあなたは何もしていない。動こうともしていない。そんなだから、周りが見えてないんです! あなたは何もしていなくても、あなたのすぐ近くにいる人は昨日、先生から電話があった時点で動いています! わたしがここに来たのは、別にあなたたちから話を聞きたかった訳じゃない。あなたたちが動いてなかったら、怒ってやろうと思ってここに来たんです!」
「――なっ」
彼は隣に立っているその人を見上げた。
「……何をした」
「あら? あたしの旦那様はそんなことにも気付かないのかしら?」
「お前は、一体何をしたんだ!」
「何って……本家との縁を切らせていただきました。それだけですが?」
「――! 勝手に何して……!」
「勝手? お言葉ですけれど、この婚姻にあたしたちは反対でした。それは桐生くんのところも同じです。でもあなた、全然動こうともしないし、諦めちゃってるし。どうしてやろうかしらと思ってたら、昨日ようやく菊ちゃんから電話がかかってきて、ああやっと動けるなと思って動いたまでです。あたしはあなたには絶対にできない方法でみんなを救ってあげようとしただけですが、何か?」
「――――」
キサ父は開いた口が塞がっていない。
そんな中葵はというと、にっこりと笑みを浮かべていた。
「それにしても葵ちゃん。あたしがもう動いてるってよくわかったわね?」
「生まれたばかりのキサちゃんを迎えに行くのに『今すぐ奪いに行こう! モタモタするな!』とおっしゃっていたので、この人はきっと、思い立ったらすぐに行動する人なんだろうなと」
「違っていたらどうしたの?」
「確証はありました。先生に『電話をしてくるのが遅い』と言っていたあなたは、恐らく人が欲しかった。それから、あなたの方が桜庭の血縁者だったこと。そして、誰よりもキサちゃんをはじめ、みんなを愛していること。だったらあなたが取る行動は何なのか。それは一つしかありません」
「大正解っ! 紀紗ちゃんが帰ってきたら、一緒にこのヘタレたちをボッコボコにしてやりましょうね!」
「はい喜んで!!」
「「「…………」」」
そんな会話を聞いて、身の危険を感じる男三人であった。



