「オレが連れてきた意味わかっただろー?」
「そうね。この子はもうここまで知ってくれているし、ここで何も言わないのは可哀想だわ」
「そーそー。それに姫奪還の件は、最初こいつ一人だけで行こうとしてたんだぞ。勇ましいったらねえよ」
「そこまでうちの娘を……いや待て。姫には相応しくないと思うぞ、あれは」
「うちの子は、姫じゃなくて女王様だものねっ」
本人いないところで、家族と幼馴染みに酷い扱いされてない?!
「それはさておき。葵ちゃん。君に是非知っておいて欲しいことがある。これは、君があの子を連れ戻そうとしてると思うから話す。それは間違いないね?」
「はい。全力でわたしが救ってみせます」
「オレらは?!」って顔をしている人たちは放っておいて。
「けれど、今からお話しになるのは恐らく答え合わせだと思うんです。それを、彼女がいないのに聞いてもいいものかどうか。わたしには、……わかりかねます」
「……理事長から、たくさん俺らの話を聞いたのは誰かな」
「わたしです」
初めは、勝手にそんなことをしたから怒られるのかと思った。けれど。
「あの子のSOSに、最初に気付いたのは誰かな」
「……多分、わたしです」
「じゃあ、千風くんの話を聞いてくれたのは誰かな」
「……わたしです」
きっと、葵たちが来る前にチカゼが話したのだろう。相談を、したのだと。
「その千風くんの背中を押してくれたのは? くそヘタレ職務放棄野郎を、説得してここへ連れてきたのは?」
「っ。わたし、です」
「この二人をぶっ飛ばしてでも、踏み込んでくれたのは?」
「…………っ」
キサ父は、静かに笑う。
「君には十分、この話を聞く資格があるよ。……いや、違うか。千風くんの話に便乗して、俺もこう言おう。こいつらをここまで動かしてくれたお礼に、今からする話を聞いてくれるかな?」
そう言われてしまったら、もやもやは一気に消えた。
「っ、はいっ! ぜひきかせてくださいっ」
――さあ。答え合わせだ。



