「まあ立ち話もなんだから、飲み物でも飲んで寛いで」とソファーへと促されながら、葵はコーヒーをブラックで頼んだ。
「葵ちゃん。それも含めてお礼を言うよ。こいつらをぶっ飛ばしてくれてありがとね」
「すみません。怒られるか呆れられると思っていたので、状況について行けなくて」
「ごめんごめん。つまり、紀紗の代わりにやってくれてありがとうってことだよ」
「と、いうと?」
「本当にどうしようもない時は今まで紀紗がやってくれてたんだけど。……今はいないからね」
だから、それをしてくれて感謝しているんだと、キサ父は話す。
「そんな君のことだから、俺らのことはある程度予想してるかな。それとも、理事長か誰かに教えてもらっているかな」
「教えていただいたこともありますし、自分で推測した部分もあります。なので、本当のところはよくわかっていません。だから先生は、わたしをここに連れてきたのだと」
「そうだね。そのつもりで菊は、千風くんだけではなくて君も連れてきたんだろう。まあ、ヘタレ防止のためもあるかな?」
「おいおい。好き勝手に言ってくれるじゃねーの」
「あら菊ちゃん。あなたそんなこと言える立場じゃないから。お父さんはわかんないけど、少なくともあたしは怒ってるわよ」
「…………ハイ。スンマセン」
おっと、早速負けているし。仕方ない。母は強しと言うから。
「それじゃあ葵ちゃん。一応答え合わせしとくかい?」
「そう、ですね。はい。お手柔らかにお願いします」
そして葵は、理事長とチカゼ、そしてキクに伝えた話をすることに――――。



