「(おっとどっこい! まさか、本当に選ばれてしまうとは。……申し訳ないけど、理事長には辞退させてくださいってお願いしとかないと。学校で唯一わたしの事情ご存じだし)」
自分の名前が載るなんて思いもしなかった葵は、理事長に話す内容を考えながら取り敢えず教室へと向か――
「おはようございます葵様!!」
「(ぬあっ!? あ、デジャブ)」
「葵様葵様! 今日もとってもお美しいですわ! もう昨日お別れしてから今日まで、とてもとても長い時間のように思えました。でも! そんな時間も【葵様の学校生活二年生ver.】の第一日目を作成することで頑張って耐えてみせましたわ! それにしても、一日目にして写真の枚数が100枚超えたとなると、これから先とても、とても……とても楽しみで仕方がありません!!」
……向かうはずが、また絡まれてしまった。
いつ見ても彼女はエンジン全開だ。きっとこれが素なんだろう。
ちょっといいなと思う反面、葵の心の中はというと。
「(やっば! まさかの100枚超え?! いつ撮られたんだろ。全然気づかなかった。……え! もしやこの人、スパイだったのか!?)」
やっぱりおかしい葵は今日も絶好調みたいです。
そんな全開の彼女に絡まれながら、何とか無事に教室へとたどり着いた葵。朝のホームルームもさらっと終わったので、早速理事長室へ向かおうとしていた。
「道明寺さん」
向かおうとしていたところで、凛とした澄んだ声に、はっきりと名前を呼ばれる。
振り返ったそこにいたのは、同じく新生徒会に選ばれた、もう一人の女の子。桜庭さん。ふわふわとやわらかそうな長い髪が、その声に少しだけやさしさの印象を加えた。
「今から理事長室行くんだよね? あたしらと一緒に行こう?」
その後ろには同じく新生徒会に選ばれた東條くん、九条くん、二宮くん。それから……。
「行くぞ」
低すぎない心地のいい声が、目の前を通り過ぎていくと同時、胸の奥底をざわざわと揺らしていく。彼の瞳は、色素の薄い、銀に近い灰色をしていた。
「(スメラギ、アキラ……)」
彼もまた、この辺では超有名な、皇財閥のご子息だ。
「(そういえばこの五人。去年も生徒会やったんだっけ。なんか慣れてる感じがするのはそのせいか。てか! うわあー! 誘ってもらっちゃった! 誘ってもらっちゃった! めちゃくちゃ嬉しいんですけどもおー!)」
表情には出さなかったものの、心の中ではトラック全力走行。
「はい是非。よろしくお願いします」
彼らとともに葵も、内心でスキップをしながら理事長室へ向かうことにしたのだった。



