すべてはあの花のために①


 パタンと、彼は携帯を閉じた。


「これで、携帯さんに謝らなくても大丈夫か?」

「……十分過ぎると思います」


 てか、あなたの周り、みんなキャラ濃いな。


「いや~にしても、お前さんの蹴りは効くな~」

「今頃ですか? 蹴ったのだいぶ前ですよ?」

「ま、目え覚めたわ。ありがとな」

「わかればいいんです」

「さ。続きは明日、あいつの父ちゃん母ちゃんから聞くにして。送ってやるから、お前ら帰るぞー」

「あ! チャリ!」

「じゃあ、チカは乗って帰れ」

「ええ!? チャリも乗せろや!」

「今日はバイクなんです~。残念でした~」

「ずりぃ!!」

「ということで。帰りましょうか、道明寺さん?」

「うむ。良きに計らえ」

「え? なんでそんなに偉そ気?」


 その後、残念ながらチカゼは真っ暗の中、自転車で帰っていった。
 葵は年季の入った大型バイクに乗せてもらい、ヘルメットを持たされる。


「そういえば。お前さんは、どうしてあんなこと知ってるんだ?」

「正しくは知っているではないです。わたしは推測したまでなので、あれは全て仮定の話です。本当のところは、キサちゃん本人から聞きたいと思ってるので」

「よくそこまで考えが思い至ったな。有り得ないとか思わなかったのか」

「……めちゃくちゃ思いましたよ。自分で思い至ってから、頭おかしくなったかと思いました」

「お前さんの頭はすでにおかしいと思うぞ。このまま警察連れて行こうか?」

「なんでまた警察?! いい加減その流れ止めてくださいよ!!」

「悪い悪い。……それで?」

「話を聞いたんです。チカくんと理事長から。彼らが出してくれたヒントから、まあ推測したって感じでしょうか」


「あの人は……」と先生が呟いている。きっと理事長のことだろう。


「あの人はあの人で、いろいろ考えがあってお前さんに話してくれたんだろうな。お礼しとくか」

「そうしてください。もちろんチカくんにも!」

「ここまで来てくれたしな。それにお前さんも連れてきてくれたし。……お前さんにも感謝してるよ。ありがとな」


 そう言って頭をぐしゃぐしゃにされたあと、ヘルメットをズボッと被される。


「明日は8時半に迎えに行くからな」

「いや、もうそれ断れないじゃないですか。まあ、ついて行くに決まってますけど」

「すまんね。またヘタレ発動したら、ぶん殴ってくれ」

「任されましたっ!」