二人はハッとした顔になる。
でも、まだだ。もうちょっとだ。
「こほん。……まあ? 気付いたのは、残念ながらわたしですし? ゴールデンウィークに彼女の両親と会って、きちんとお話しようと思います。それで、歓迎会であちらに行った時には、婚約者の方とも会って、あなたたちがくそが付くほどのヘタレ野郎だと、きちんと話してみようと思います。親戚の人たちとかは……どうでしょう。納得しないんじゃないですかねー。それだったら、結婚披露宴に乗り込んで、キサちゃんに会って、お姫様抱っこでもして、好きだとか言って抱き締めて、おでこにチューでもして攫ってきちゃいましょうかね? ついでにお前らが、ヘタレ過ぎて気付きもしねーから『わたしが来たよ!』って話しといてあげます」
これでもかと言うほどの嫌味をたっぷり込めた後、「それが嫌だったら」と、葵は彼らにぶつけた。
「さっさと彼女を奪い去る準備して! 筋トレでもして体力でもつけたらいいんですよ! お姫様抱っこ、してやったらいいじゃないですか! 好きだって言ってやればいいじゃないですか! キスの一つや二つ、ぶちかましてやったら、抱き締めてやったらいいじゃないかって言ってんだよ、こんのヘタレが! 誰が変われなんて言ったんですか! 好きだって気持ちは、絶対に変わっちゃいけないものだ!」
「はあはあ」と、思いの丈をぶつけにぶつけまくったので、少し息が上がった。
「……あのね先生。わたしはあなたに、勇気を分けにここまで来たんです。なんで、自分に得でもないようなことで動けると思いますか? それは、気持ちがあるからなんですよ。わたしは、気持ち一つ持ってここまで来ましたよ。あなたになんとか、勇気をあげたい。……あげてやろうじゃないですか!」
もし、彼女が本当は、彼女の両親と【血】が繋がっていなくても!
もし、彼女の婚約者とは実は【血縁者】だったとしても!
もし、婚約者とあなたたちが【幼馴染み】だとしても!
「絶対に、彼らの両親も婚約者も、あなたの話をちゃんと聞いてくれます。だって仲が良かったんでしょう? 彼女の両親も、婚約者も、その両親も大好きなんでしょう? でもあなたは、自分の気持ちを持っていながら動けていない。昔からそんなに仲の良かった、あなたの大好きな彼らの両親が、婚約者が、あなたの気持ちを聞かないわけないでしょう? わかったら、早く連絡でもしなさい! その、手に持ってる携帯! どうせ彼女の留守電とか入ってるんじゃないんですか? 握り締めてたってね、携帯は使えないんですよ! 携帯してるのに携帯として使ってないのは、携帯さんに失礼だろっ!」



