葵は、小さくなった二人の影を遠くで見つめていた。
「(チカくんはちゃんと踏み込んだし、ちゃんと頼るって言ってくれた。だから、わたしはここまでだ。ここまで……なんだけど)」
どうしてだろう。今、無性に彼らをぶっ飛ばしてやりたくて仕方ない。
「(なんで男のあんたらが、こんなに頼りないんだ! よっぽど、芯のしっかりしたキサちゃんの方が男らしいじゃないか!)」
((まあまあ落ち着いて))
「(これが落ち着いていられるか!)」
((確かに彼らは、今は頼りないかもしれない。だから【 】なんでしょう?))
「(うう……わかってるよ。それに、わたしが踏み込めるのはここまでなんだ。それも、ちゃんとわかってる)」
((そうね。あんたは、これ以上無理はしたらいけない。それはシントとの約束だった。けどあんたは、彼の力になると。そう言ってたわね))
「(うん。だからわたしは、いずれその約束は破ることになる。シントには申し訳ないけど、すでに無理しちゃってるしね)」
((はあ。あんたの気持ちも、痛いほどよくわかるけど。これ以上は気を付けなよ。わかった?))
「(うん……とは、言えないややっぱり。わたしは、彼らのために、無理してやろうって理事長と話した時には決めてたんだ。だから、ごめんね)」
((わかったわ。じゃあ、それなりには頼んだからね))
「(ほどほどにね~)」
((はあ?))
「(すみませんごめんなさい努力します)」
((わかればいいのよ、わかれば))
「――いいか。もうこの話はこれで終わりだ」
「違うキク! そうじゃねえ! いいから話を聞け!」
「チカ。オレも変わらないんだ。だから、お前がそんな顔すんな」
「終わってねえんだ! だから、お前もまだ諦めんじゃねーよ!」
葵が脳内でそんな話をしている間に、一旦そこまでの話は終わったらしい。
「(ダメか。やっぱり、チカくんには難しかったのか)」
……いや。彼の話が届いてないわけじゃないのか、あれは。
彼の肩は小さく震え、背中はさっきよりも小さく見えた。けれどその彼の手の中には、強く強く、握り締められた何かがある。
彼も、本当はまだ、諦めたくないんだ。
「(だったら諦めんなっ!)」



