すべてはあの花のために①


 葵は、小さくなった二人の影を遠くで見つめていた。


「(チカくんはちゃんと踏み込んだし、ちゃんと頼るって言ってくれた。だから、わたしはここまでだ。ここまで……なんだけど)」


 どうしてだろう。今、無性に彼らをぶっ飛ばしてやりたくて仕方ない。


「(なんで男のあんたらが、こんなに頼りないんだ! よっぽど、芯のしっかりしたキサちゃんの方が男らしいじゃないか!)」

((まあまあ落ち着いて))

「(これが落ち着いていられるか!)」

((確かに彼らは、今は頼りないかもしれない。だから【  】なんでしょう?))

「(うう……わかってるよ。それに、わたしが踏み込めるのはここまでなんだ。それも、ちゃんとわかってる)」

((そうね。あんたは、これ以上無理はしたらいけない。それはシントとの約束だった。けどあんたは、彼の力になると。そう言ってたわね))

「(うん。だからわたしは、いずれその約束は破ることになる。シントには申し訳ないけど、すでに無理しちゃってるしね)」

((はあ。あんたの気持ちも、痛いほどよくわかるけど。これ以上は気を付けなよ。わかった?))

「(うん……とは、言えないややっぱり。わたしは、彼らのために、無理してやろうって理事長と話した時には決めてたんだ。だから、ごめんね)」

((わかったわ。じゃあ、それなりには頼んだからね))

「(ほどほどにね~)」

((はあ?))

「(すみませんごめんなさい努力します)」

((わかればいいのよ、わかれば))


「――いいか。もうこの話はこれで終わりだ」

「違うキク! そうじゃねえ! いいから話を聞け!」

「チカ。オレも変わらないんだ。だから、お前がそんな顔すんな」

「終わってねえんだ! だから、お前もまだ諦めんじゃねーよ!」


 葵が脳内でそんな話をしている間に、一旦そこまでの話は終わったらしい。


「(ダメか。やっぱり、チカくんには難しかったのか)」


 ……いや。彼の話が届いてないわけじゃないのか、あれは。
 彼の肩は小さく震え、背中はさっきよりも小さく見えた。けれどその彼の手の中には、強く強く、握り締められた何かがある。

 彼も、本当はまだ、諦めたくないんだ。


「(だったら諦めんなっ!)」