すべてはあの花のために①


 さあ。そろそろこの質疑応答を、終わりにしようか。


「五つ目です理事長」


【桜庭紀紗 家庭の事情 婚約者 ゴールデンウィーク明け】


「そして【四国】。これらが関係していることを教えてください」


 彼は本当に驚いている。どうして四国が出てきたのかと。


「そっか。そこまでわかってるか。ははは」


 彼は片手で頭を押さえ、静かに笑っている。
 葵は何も話さず、じっと彼の言葉を待つ。予想が正しければ、もう一つの質問をしなければならないからだ。


 それからしばらくして、理事長はゆっくり話してくれた。
 もうそこまで知っているなら隠していたところで無駄だと思ったのか、【四国】の詳しい場所も、そして【その日時】の意味も。


「理事長、最後の質問です。昨日、彼らは学校に来ていませんでした。理事長は、彼らが何をしていたか知っていますか?」

「知ってはいないんだ。ごめんね」


 けれど、「だけどね?」と理事長は続けた。


「彼らは、会っていたんじゃないかとぼくも思うよ」


 ――君もでしょう?

 言外に込められた希望の回答に、少し安堵する。


「(少しおまけしてもらっちゃったかな?)」


 心の中で再びお礼を言った。


「(でも、会っていたのならまだ可能性はある)」


 きっと、彼も彼女と気持ちは一緒だ。ただ諦めているだけ。
 だったら、届くまで話さないといけないじゃないか!


「(ね? そうでしょチカくん)」


 葵は瞳を閉じ、そっと胸に手を当てた。
 ……大丈夫。まだ間に合うよ。


「ありがとうございました理事長。わたし、頑張ってこようと思います」

「そうかい。それは何より。でもその前に一つ。ぼくから君に聞いておきたいことがあるんだ。いいかな」

「あ、はい。それは全然」

「よかった。それじゃあ聞くよ?」


 ――君にとって、【家族】とは何かな。