彼はふっと笑った。
「回答次第でまた疑問が増えたんじゃない?」
「仰る通りです。顔に出てました?」
「そうだね。この間は全然出ていなかったのに、今日はそれができていない。……随分焦っているみたいだね」
「そうですね。正直めちゃくちゃ焦ってます。誰かをぶっ飛ばしたくて仕方ありません」
「ぶ、ぶっ飛ばっ!?」と理事長は驚いているが、「それでも」と葵は続ける。
「それでもわたしはまだ、諦めていませんから。できる限りのことはやってやりますよ」
「……そっか。そうだね。じゃあぼくも、精一杯君のお手伝いをしよう」
――新しく増えた疑問でも質問でも、聞きたいことがあるならいくらでも聞きなさい。
真っ直ぐなその言葉。全くぶれない意志の強さには、どこか温かみを含んでいる。
「(理事長はきっと、生徒みんなのお父さんなんだな)」
みんなにそうやって言ったら、ものすごい嫌そうな顔されるのが目に浮かぶけど。
小さく笑いながら彼に感謝を告げて、葵は再び疑問をぶつけていった。
「ではさっきの続きなんですけど、わたしは生徒会メンバーは全員知っていると思っていました。でも、違った。……桜庭紀紗は、いつから朝倉菊、柊千風と知り合いでしたか」
「…………。はっきりとは知らないんだけど、桜李が小学校に上がるまでには知り合いだったみたいだね」
そうなると、幼稚園とか保育園とか。その辺りの時から知り合いってことか。
「(でも、なんだこの違和感は)」
何故理事長は今、間を空けた?
何かが違った?
いや、何かが足りなかったのか?
「(あぁああモヤモヤする……!)」
……ん? そういえば。
「すみません理事長。そういえば、朝倉先生ってお幾つでしたっけ」
「? 菊は今は確か23だね。今年で24になるよ」
「それがどうしたの?」って顔されたけど、まあ確かに話はズレてしまったかもしれない。
「(てか、あれで24ですか! あのだらしなさで、完全に老けて見えてるよ?!)」
いやいや違う違う。てことは、七つ八つ離れていることになるわけだ。
「すみませんありがとうございます。ちょっと確認しておきたかったので(※本当は興味本位です)じゃあ次に行きます。さっきのは続きだったので、四つ目。彼女が学校を辞めた理由に、家庭の事情とありました。……それは、婚約者が関係あるんじゃないですか」
先程彼は、知っている人間の中に『婚約者とその両親』と、丁寧に教えてくれたんだ。だから、これは確実だろう。
確信があるように言ったからな。彼も少し驚いている。
「そうだね、その通りだよ」
やっぱりそうか。そうだとしたら聞いておきたいことが。
「それでは理事長。これはできる限りで結構です。【家庭の事情】これについて、言えるところまでで構わないので教えてください」



