すべてはあの花のために①


 彼はふっと笑った。


「回答次第でまた疑問が増えたんじゃない?」

「仰る通りです。顔に出てました?」

「そうだね。この間は全然出ていなかったのに、今日はそれができていない。……随分焦っているみたいだね」

「そうですね。正直めちゃくちゃ焦ってます。誰かをぶっ飛ばしたくて仕方ありません」


「ぶ、ぶっ飛ばっ!?」と理事長は驚いているが、「それでも」と葵は続ける。


「それでもわたしはまだ、諦めていませんから。できる限りのことはやってやりますよ」

「……そっか。そうだね。じゃあぼくも、精一杯君のお手伝いをしよう」


 ――新しく増えた疑問でも質問でも、聞きたいことがあるならいくらでも聞きなさい。

 真っ直ぐなその言葉。全くぶれない意志の強さには、どこか温かみを含んでいる。


「(理事長はきっと、生徒みんなのお父さんなんだな)」


 みんなにそうやって言ったら、ものすごい嫌そうな顔されるのが目に浮かぶけど。

 小さく笑いながら彼に感謝を告げて、葵は再び疑問をぶつけていった。



「ではさっきの続きなんですけど、わたしは生徒会メンバーは全員知っていると思っていました。でも、違った。……桜庭紀紗は、いつから朝倉菊、柊千風と知り合いでしたか」

「…………。はっきりとは知らないんだけど、桜李が小学校に上がるまでには知り合いだったみたいだね」


 そうなると、幼稚園とか保育園とか。その辺りの時から知り合いってことか。


「(でも、なんだこの違和感は)」


 何故理事長は今、()を空けた?

 何かが違った?
 いや、何かが足りなかったのか?


「(あぁああモヤモヤする……!)」


 ……ん? そういえば。


「すみません理事長。そういえば、朝倉先生ってお幾つでしたっけ」

「? 菊は今は確か23だね。今年で24になるよ」


「それがどうしたの?」って顔されたけど、まあ確かに話はズレてしまったかもしれない。


「(てか、あれで24ですか! あのだらしなさで、完全に老けて見えてるよ?!)」


 いやいや違う違う。てことは、七つ八つ離れていることになるわけだ。


「すみませんありがとうございます。ちょっと確認しておきたかったので(※本当は興味本位です)じゃあ次に行きます。さっきのは続きだったので、四つ目。彼女が学校を辞めた理由に、家庭の事情とありました。……それは、婚約者が関係あるんじゃないですか」


 先程彼は、知っている人間の中に『婚約者とその両親』と、丁寧に教えてくれたんだ。だから、これは確実だろう。
 確信があるように言ったからな。彼も少し驚いている。


「そうだね、その通りだよ」


 やっぱりそうか。そうだとしたら聞いておきたいことが。


「それでは理事長。これはできる限りで結構です。【家庭の事情】これについて、言えるところまでで構わないので教えてください」