すべてはあの花のために①


 目を覚ますと、そこは理事長室の仮眠室だった。


「やあ、起きたかい。大丈夫? 扉の前で倒れていたんだよ」


 どうやら、あのまま気を失ってしまっていたようだ。


「(……あれ?)」


 理事長室? 確か、中から聞こえてきた話にすごい勢いで記憶を整理して、思い出して、考えて。それで、途中で頭痛がして……。


「(なんだ、この不快感は)」


 険しい顔をする葵に、理事長が「本当に大丈夫? 警察行く?」と声をかけてくれたが、それについては丁重にお断りした。
 どうして、ここでも変態さん扱いなんだ。今シリアスモードだぞ?


「……理事長。わたしはあなたに聞きたいことがあって来ました。今、大丈夫でしょうか」

「ああ勿論。大丈夫だよ。君さえよければ」


「君は、一番最初に来ると思っていたんだけどね」そう言って彼は、ブラックコーヒーをくれた。


「まあ、私が言うのもなんだけど、無理はしないように。もし心配なら、ちゃんと病院に行くんだよ。……それで? 君の話は彼らと同じことかな」

「彼らと同じことも多分聞くと思います。でも、恐らく違うことも聞くと思うんですが、よろしいでしょうか」

「うん。ぼく(、、)が答えられる範囲でなら、喜んで答えよう」

「ありがとうございます理事長」


 そして葵は、質問を連ねていく。


「まず一つ目。彼らと同じにしましょう。お答えできる範囲で構いません。どうして昨日(、、)から、桜庭紀紗は学校に来ていないんでしょうか」

「……本当に、君はよく見えているね。感心するよ。そうだな。それではその問いには、こう答えよう」


【4月いっぱいで、桜庭紀紗は学校を辞めた】


「ちゃんと、回答になってるかな」

「はい十分です。ありがとうございます。では二つ目」


 ――どうして彼女は、この学校を辞めたんですか。


「…………」


 ストレート過ぎたか。
 けれど理事長は、答えられる範囲でなら答えてくれると、そう言った。

 だから、彼はできる限り教えてくれるだろう。
 すると予想通り、彼は「ストレートだね」とにっこり笑った後、質問に答えてくれた。


「それにはこう答えるよ」


【家庭の事情で、彼女は辞めた】


 成る程な。回答は、その質問の回答のみか。だったら……。


「わかりました。じゃあ三つ目。その家庭の事情の全て(、、)を、誰がご存じですか」

「…………。ぼく、菊、千風くん、彼女の家族とその親戚、婚約者とその両親と親戚だよ」


 少なくとも彼以外の生徒会メンバーは、『全て』は知らないのか。いや、どちらかと言えば『ある程度は』知っている、か。


「(……なんで?)」


 彼らは昔から、一緒にいたんじゃないのか。