目を覚ますと、そこは理事長室の仮眠室だった。
「やあ、起きたかい。大丈夫? 扉の前で倒れていたんだよ」
どうやら、あのまま気を失ってしまっていたようだ。
「(……あれ?)」
理事長室? 確か、中から聞こえてきた話にすごい勢いで記憶を整理して、思い出して、考えて。それで、途中で頭痛がして……。
「(なんだ、この不快感は)」
険しい顔をする葵に、理事長が「本当に大丈夫? 警察行く?」と声をかけてくれたが、それについては丁重にお断りした。
どうして、ここでも変態さん扱いなんだ。今シリアスモードだぞ?
「……理事長。わたしはあなたに聞きたいことがあって来ました。今、大丈夫でしょうか」
「ああ勿論。大丈夫だよ。君さえよければ」
「君は、一番最初に来ると思っていたんだけどね」そう言って彼は、ブラックコーヒーをくれた。
「まあ、私が言うのもなんだけど、無理はしないように。もし心配なら、ちゃんと病院に行くんだよ。……それで? 君の話は彼らと同じことかな」
「彼らと同じことも多分聞くと思います。でも、恐らく違うことも聞くと思うんですが、よろしいでしょうか」
「うん。ぼくが答えられる範囲でなら、喜んで答えよう」
「ありがとうございます理事長」
そして葵は、質問を連ねていく。
「まず一つ目。彼らと同じにしましょう。お答えできる範囲で構いません。どうして昨日から、桜庭紀紗は学校に来ていないんでしょうか」
「……本当に、君はよく見えているね。感心するよ。そうだな。それではその問いには、こう答えよう」
【4月いっぱいで、桜庭紀紗は学校を辞めた】
「ちゃんと、回答になってるかな」
「はい十分です。ありがとうございます。では二つ目」
――どうして彼女は、この学校を辞めたんですか。
「…………」
ストレート過ぎたか。
けれど理事長は、答えられる範囲でなら答えてくれると、そう言った。
だから、彼はできる限り教えてくれるだろう。
すると予想通り、彼は「ストレートだね」とにっこり笑った後、質問に答えてくれた。
「それにはこう答えるよ」
【家庭の事情で、彼女は辞めた】
成る程な。回答は、その質問の回答のみか。だったら……。
「わかりました。じゃあ三つ目。その家庭の事情の全てを、誰がご存じですか」
「…………。ぼく、菊、千風くん、彼女の家族とその親戚、婚約者とその両親と親戚だよ」
少なくとも彼以外の生徒会メンバーは、『全て』は知らないのか。いや、どちらかと言えば『ある程度は』知っている、か。
「(……なんで?)」
彼らは昔から、一緒にいたんじゃないのか。



