すべてはあの花のために①


「(っ、ダメだ。やっぱりわからない。もう時間がないっていうのに……っ)」


 理事長室に来たのは正解だ。
 彼女が何故、『敢えて』を選んだのかが不思議でならなかったから、理事長なら知ってると思っ――……あ、れ。


「そういえば、朝倉先生は……?」


 彼は今、一体何をしている。
 曲がり形にも、担任であり生徒会の管理者。最近彼らは、教室以外では会っていなかったはずだ。彼があまりにも、彼女を避けていたから。


「(一体、何があったんだ。先生は知ってるんじゃないのか!?)」


 もし、聞いてなかったとしても、恐らく予想はついているはずだ。これは勘。


「多分チカくんも、ある程度のことは知っ――……そうか。もしかして」


 彼女が桜に来られるのが4月いっぱいまでだったことを、二人とも知ってたんじゃないのか。

 でも、彼女は言わないと。そこは変わらないと。
 いや。辞めることも変わらないと、そういうことか。


「(ダメだ。それでも確証がなさ過ぎる。……っ。それに、これ以上はわたしには――)」


 ――その時。葵の頭の中に、劈くような耳鳴りが鳴り響く。





「(――~~……っ。はあっ。ま、たか……。もう、なんだっていうん……くっ、頭がっ。割れる――――)」


 その耳鳴りに葵は立っていられなくなり、理事長室の扉に背を預けて、ズルズルと座り込むも、


「はあっ、……きさ。ちゃん……」


 最後にそう言葉を洩らし、そのまま意識を失った。