――その、生徒会室へ向かう途中。
「おー、こーーらどーーる気なんーー」
「あたーー、ー変ーーーいわ」
空き教室から、僅かに生徒の声が聞こえた。
「(またカナデくんじゃあるまいな)」
どうやら、カナデの過去の失敗は葵の心の中で深く根付いてるようだ。ちらっと覗いてみると……。
「だからって、このまま何も言わないのか」
「だから言ったじゃない。あたしは、やめるんだ、って」
「そうじゃねーよ!」
「この話はこれでお終いよ、チカ」
「……くそっ」
どうやら深刻な話をしているようだ。
「(わたしの出番じゃないか。今チカくんは、諦めないで頑張ってる)」
そう判断し、葵は静かにその空き教室を後にした。
……この決断が、後に後悔することになるとも知らずに。
「(……あれ? オウリくんとアカネくん?)」
生徒会室に着くと、彼らが机に突っ伏していた。よく見ると、彼らの肩はほんの少し上下に動いている。
「(寝てるのか)」
葵は彼らに毛布を掛けて、少し離れたところで集計の作業をすることに。
「(もしかして、待っててくれたのかな)」
そうだといいなと思いながら作業をしていると。
「――っ、はっ。い、やだ……っ」
聞いたことのない声。声変わりする前の、子どものやわらかさをもった声が、苦しそうに魘されていた。
「(……おうり、くん……?)」
葵が気付くよりも先に、彼の前に突っ伏していたはずのアカネが、毛布を掛け直し頭を優しく撫でていた。
じっと見ていることに気付いたのか。アカネはこちらに視線を向けた後、静かに人差し指を口の前に立てた。
葵はその意味を理解し、静かに作業に取りかかる。でも、その時のアカネの泣きそうな表情は、頭にこびりついたままだった。



