すべてはあの花のために①


 ――その、生徒会室へ向かう途中。


「おー、こーーらどーーる気なんーー」

「あたーー、ー変ーーーいわ」


 空き教室から、僅かに生徒の声が聞こえた。


「(またカナデくんじゃあるまいな)」


 どうやら、カナデの過去の失敗は葵の心の中で深く根付いてるようだ。ちらっと覗いてみると……。


「だからって、このまま何も言わないのか」

「だから言ったじゃない。あたしは、やめるんだ、って」

「そうじゃねーよ!」

「この話はこれでお終いよ、チカ」

「……くそっ」


 どうやら深刻な話をしているようだ。


「(わたしの出番じゃないか。今チカくんは、諦めないで頑張ってる)」


 そう判断し、葵は静かにその空き教室を後にした。

 ……この決断が、後に後悔することになるとも知らずに。



「(……あれ? オウリくんとアカネくん?)」


 生徒会室に着くと、彼らが机に突っ伏していた。よく見ると、彼らの肩はほんの少し上下に動いている。


「(寝てるのか)」


 葵は彼らに毛布を掛けて、少し離れたところで集計の作業をすることに。


「(もしかして、待っててくれたのかな)」


 そうだといいなと思いながら作業をしていると。


「――っ、はっ。い、やだ……っ」


 聞いたことのない声。声変わりする前の、子どものやわらかさをもった声が、苦しそうに魘されていた。


「(……おうり、くん……?)」


 葵が気付くよりも先に、彼の前に突っ伏していたはずのアカネが、毛布を掛け直し頭を優しく撫でていた。
 じっと見ていることに気付いたのか。アカネはこちらに視線を向けた後、静かに人差し指を口の前に立てた。

 葵はその意味を理解し、静かに作業に取りかかる。でも、その時のアカネの泣きそうな表情は、頭にこびりついたままだった。