すべてはあの花のために①


 無事投票を終えた葵。


「(はあ。無事に投票という任務も終えたことだし、あとは明日から勉強と友達作りに励まなければ!)」


 なんてことを考えながら帰宅していた。


「(……ん?)」


 が、しかし。そんなあっさり一日が終わるわけがなく。

 学校を出て坂を下り、北区にある桜と西地区の、ちょうど境界付近に差し掛かったところで、何かが聞こえた。


「――――――」


 隣接したビルの間からだ。


「(この辺、影になってて薄暗いし。そもそも危ないんだよね)」


 西地区にある藤ヶ丘高校(ふじがおか)は、いわゆる不良校と呼ばれており。この辺りは治安があんまり宜しくないという噂を耳にしたことがある。実際目にしたわけではないから、本当かどうかはわからないのだけれど。


「(人の声だ)」


 そうは思いつつ、気になって仕方がない葵は建物の側でよくよく聞き耳を立ててみることにした。



「――おい。その制服、『  』のお坊ちゃんだろ? いいところで会ったな~。なあ、俺ら今ちょうど金に困っててよ。ちょっと貸してくんねえかな?」

「?」

「いやだからさ、言ってることわかんねえ?」

「……?」

「あのな、ここから無事に帰して欲しかったらよお、有り金全部寄越せって言ってんの」

「………………?」



「(いーやー! なんか喝上げされてるんですけど! 何このベッタベタすぎる展開! それにしても()の生徒がよりにもよって……っ。高校生が! 中学生に寄って集って何してんだ!)」


 藤高生徒五、六人が、何処ぞの男子中学生に喝上げしている現場を目撃!
 弱い者イジメ断固反対を指針に掲げる、葵の選択は――――。