すべてはあの花のために①


 聞き分けのいいキサは、今日はどうやら昨日のように暗くなってはいないようだ。


「(今日は元気なのかな。無理してないといいんだけど……)」


 チカゼからは、何も聞いていない。


「(……わたしができるのは、ここまでだから)」

「あっちゃん、昨日はごめんね。あたし、全然会議に集中してなかった。でも、もう大丈夫だからね?」


 どこか軽い調子でそう言う彼女。……本当に大丈夫なのだろうか。


「そ、そっか。わたしも、昨日はあんな言い方してごめんよおー……」

「え? 全然いいよ! 聞いてなかったあたしがいけないんだし! おかげで、チカが追いかけてくれて。話、聞いてもらったんだーっ」

「! そうなんだね! それはよかった! キサちゃんのチカくんいじりが最近見られてないから、ちょっと寂しかったんだー」

「そうかそうか~。それじゃあ今日から時間の余す限り存分にいじり倒してやろ~かのお」


 彼女は言った。時間の余す限り……と。

 そのことに気付いたとわかったのか。キサは、苦笑いしながら続きを話す。


「あっちゃん。あたし、みんなに話さないといけないことがあるんだ」


 苦い笑みを浮かべながら、彼女は生徒会室の扉を開ける。

 先程まではずっと、開けなくてはと思っていたのに。今は、その扉がずっと開かなければいいのにと。……そう、思ってしまった。



「あー! やっとキサちゃんとアオイちゃん来たー」

「もおっ。遅いよ二人とも!」

「このアタシを待たすなんて、いい度胸してるじゃない」

「ここの電波どうにかなんないの」

「??」

「ん~んん、んんーんんっ」
(※アキラです。例の飴を食べてます)

「ごめんよー! 待たせたの~皆の衆!」


 アキラのツッコミはスルーして、葵はちらっとチカゼの方を盗み見る。けれど彼は、じっと窓の外を見ていて、どんな表情をしているのかはわからなかった。


「いやーあっちゃんがさ、今扉の前で変態さんになってて、警察に通報してたら遅くなっちゃったんだー」

「え? キサちゃん? 通報したんですか? そうなんですか?」

「ん? …………(にっこり)」

「(マジか! リボンも奪われていないし、卒業もしていないのに、わたしは警察に追い回されるのか!)」

「それはそうと! あたしからみんなに、重大発表があるのだ!」


 キサは笑顔でそう言う。チカゼは眉一つ動かない。


「(……チカくん?)」


 彼は一体、キサから何を聞いたというのか――――



「あたし、桜やめまーす!」