聞き分けのいいキサは、今日はどうやら昨日のように暗くなってはいないようだ。
「(今日は元気なのかな。無理してないといいんだけど……)」
チカゼからは、何も聞いていない。
「(……わたしができるのは、ここまでだから)」
「あっちゃん、昨日はごめんね。あたし、全然会議に集中してなかった。でも、もう大丈夫だからね?」
どこか軽い調子でそう言う彼女。……本当に大丈夫なのだろうか。
「そ、そっか。わたしも、昨日はあんな言い方してごめんよおー……」
「え? 全然いいよ! 聞いてなかったあたしがいけないんだし! おかげで、チカが追いかけてくれて。話、聞いてもらったんだーっ」
「! そうなんだね! それはよかった! キサちゃんのチカくんいじりが最近見られてないから、ちょっと寂しかったんだー」
「そうかそうか~。それじゃあ今日から時間の余す限り存分にいじり倒してやろ~かのお」
彼女は言った。時間の余す限り……と。
そのことに気付いたとわかったのか。キサは、苦笑いしながら続きを話す。
「あっちゃん。あたし、みんなに話さないといけないことがあるんだ」
苦い笑みを浮かべながら、彼女は生徒会室の扉を開ける。
先程まではずっと、開けなくてはと思っていたのに。今は、その扉がずっと開かなければいいのにと。……そう、思ってしまった。
「あー! やっとキサちゃんとアオイちゃん来たー」
「もおっ。遅いよ二人とも!」
「このアタシを待たすなんて、いい度胸してるじゃない」
「ここの電波どうにかなんないの」
「??」
「ん~んん、んんーんんっ」
(※アキラです。例の飴を食べてます)
「ごめんよー! 待たせたの~皆の衆!」
アキラのツッコミはスルーして、葵はちらっとチカゼの方を盗み見る。けれど彼は、じっと窓の外を見ていて、どんな表情をしているのかはわからなかった。
「いやーあっちゃんがさ、今扉の前で変態さんになってて、警察に通報してたら遅くなっちゃったんだー」
「え? キサちゃん? 通報したんですか? そうなんですか?」
「ん? …………(にっこり)」
「(マジか! リボンも奪われていないし、卒業もしていないのに、わたしは警察に追い回されるのか!)」
「それはそうと! あたしからみんなに、重大発表があるのだ!」
キサは笑顔でそう言う。チカゼは眉一つ動かない。
「(……チカくん?)」
彼は一体、キサから何を聞いたというのか――――
「あたし、桜やめまーす!」



