少し落ち着いたのか、「そうだな」と彼は再び口を開く。
「確かに、それは譲らなくていいことだ。心配ならその時に追いかけたらよかったな。ここにいる俺たち全員」
そう言う彼の視線は、少しばかり廊下の方へと移っていた。
「(やっぱり、気付いてたか)」
いや、最初から知ってたな、これは。
「そうだ。その通りだ! だから、わたしなんてほっといてキサちゃんを追いかけるべきだったのに! 何してるん――」
ぱちん。
今度は葵が、目を瞬かせる番だった。何故アキラは今、葵の頬を軽く叩くようにして触れているのか。
「なんで今、俺がお前を叩いたかわかる?」
「……わからない」
今は、キサを優先するべきだと思っている。
「今お前が、『わたしなんて』と言ったから。……確かに俺たちは紀紗が心配だし、それは変わらない。でも、今紀紗には千風がついてるから大丈夫だ。……だから葵。俺たちは、お前のことも心配だったからここに来たんだよ」
アキラがそう言うと、廊下にいたみんなが、ぞろぞろと教室に入ってきて葵の机のまわりを囲み始める。
入ってきたみんなは何も言わない。顔も暗い。ツバサなんかは、葵を責めたことを悔いているのか、申し訳なさそうな顔までしている。
……そうか。彼らはみんな……。
「葵? どうしてみんなが心配してるのか、お前はもうわかっているんだろ?」
アキラはあの後きっと、葵がわざと出て行けと言った意味を彼らに伝えたんだろう。だから彼らは、こんなにも暗い表情なんだ。
「(だったら、わたしは――)そんなのっ、友達だからに決まってる!」
笑顔で言って、みんなの表情を明るくしよう。
「心配してくれて、ありがとう!」



