すべてはあの花のために①


 少し落ち着いたのか、「そうだな」と彼は再び口を開く。


「確かに、それは譲らなくていいことだ。心配ならその時に追いかけたらよかったな。ここにいる俺たち全員」


 そう言う彼の視線は、少しばかり廊下の方へと移っていた。


「(やっぱり、気付いてたか)」


 いや、最初から知ってたな、これは。


「そうだ。その通りだ! だから、わたしなんてほっといてキサちゃんを追いかけるべきだったのに! 何してるん――」


 ぱちん。
 今度は葵が、目を瞬かせる番だった。何故アキラは今、葵の頬を軽く叩くようにして触れているのか。


「なんで今、俺がお前を叩いたかわかる?」

「……わからない」


 今は、キサを優先するべきだと思っている。


「今お前が、『わたしなんて』と言ったから。……確かに俺たちは紀紗が心配だし、それは変わらない。でも、今紀紗には千風がついてるから大丈夫だ。……だから葵。俺たちは、お前のことも心配だったからここに来たんだよ」


 アキラがそう言うと、廊下にいたみんなが、ぞろぞろと教室に入ってきて葵の机のまわりを囲み始める。
 入ってきたみんなは何も言わない。顔も暗い。ツバサなんかは、葵を責めたことを悔いているのか、申し訳なさそうな顔までしている。

 ……そうか。彼らはみんな……。


「葵? どうしてみんなが心配してるのか、お前はもうわかっているんだろ?」


 アキラはあの後きっと、葵がわざと出て行けと言った意味を彼らに伝えたんだろう。だから彼らは、こんなにも暗い表情なんだ。


「(だったら、わたしは――)そんなのっ、友達だからに決まってる!」


 笑顔で言って、みんなの表情を明るくしよう。



「心配してくれて、ありがとう!」