その後、無事に教室へ辿り着いた葵は、担任のさらっとした挨拶の後、全校生徒が集まった講堂での長い理事長の話も聞き終わり。残すところは、新生徒会メンバーへの投票だけとなった。
「ねえ、あんた誰に入れるの?」
「あたしはもちろん、皇くんに入れるよ!」
ここ桜では、新学年になる日。入学式、始業式、新クラス発表、――そして。
「あーやっぱりね。じゃああたしは東條くんに入れとこうかな?」
「にしてもSクラスの人たちって、どうしてこうも美男美女が集まるかな」
「天が、二物も三物も与えちゃってるなこれ」
「そうですなあ」
貼り出されたSクラスの生徒の中から、新生徒会メンバーを選ぶ投票が行われる。
生徒会はSクラスの生徒で構成されているが、三年生は将来のことを考えて、めったにメンバーに選ばれることはない。もちろん、例外はあるみたいだけれど。
そして、入学式の翌日。投票数や家柄、成績等を踏まえ、集計が行われた【新生徒会メンバー】が発表されるのだ。
「(わたしは去年編入してきたから選ばれることはなかったけど、もし選ばれるようなことがあったら、申し訳ないけど辞退させてもらわないと。ていうか、この投票自体初めてするんですけど。……確か、この人に、入れるんだよね?)」
葵が持つ投票用紙。そこには『 』の文字が、ハッキリと書き込まれていた。



