すべてはあの花のために①


 その後、無事に教室へ辿り着いた葵は、担任のさらっとした挨拶の後、全校生徒が集まった講堂での長い理事長の話も聞き終わり。残すところは、新生徒会メンバーへの投票だけとなった。



「ねえ、あんた誰に入れるの?」

「あたしはもちろん、(すめらぎ)くんに入れるよ!」


 ここ桜では、新学年になる日。入学式、始業式、新クラス発表、――そして。


「あーやっぱりね。じゃああたしは東條(とうじょう)くんに入れとこうかな?」

「にしてもSクラスの人たちって、どうしてこうも美男美女が集まるかな」

「天が、二物も三物も与えちゃってるなこれ」

「そうですなあ」


 貼り出されたSクラスの生徒の中から、新生徒会メンバーを選ぶ投票が行われる。

 生徒会はSクラスの生徒で構成されているが、三年生は将来のことを考えて、めったにメンバーに選ばれることはない。もちろん、例外はあるみたいだけれど。

 そして、入学式の翌日。投票数や家柄、成績等を踏まえ、集計が行われた【新生徒会メンバー】が発表されるのだ。


「(わたしは去年編入してきたから選ばれることはなかったけど、もし選ばれるようなことがあったら、申し訳ないけど辞退させてもらわないと。ていうか、この投票自体初めてするんですけど。……確か、この人(、、、)に、入れるんだよね?)」


 葵が持つ投票用紙。そこには『  』の文字が、ハッキリと書き込まれていた。