そしてようやく、一限目終了を告げる音が校内に響き渡る。
「(あ。終わったんだ)」
目の前にいるチカゼも同じことを思ったのか、ほっとした顔になっている。
「なんとか、逃げ切ったねー」
「ああ、そうだな」
そう言いながら笑い合う。二人とも何事もなく、無傷で……?
無傷??
「む……」
「……? む?」
「無傷じゃなあーいぃ!?」
「!?!?」
いきなり叫んだ葵に、チカゼは心臓が止まるかと思った。
「ど、どうした! どっか怪我したのか!?」
チカゼは葵の頭が元からおかしいのが酷くなったのかと一瞬思ったが、今では本当に心配そうにしている。
「チカくんどうしよう……!」
「取り敢えず落ち着け。今の一瞬で一体何があった」
「だって、だってえ……」と、葵は自分に巻かれた彼のネクタイと、それがあったはずの彼の首元を交互に見る。
その様子に、最初は何を表現しているのかわからなかったチカゼだったが。
理解してからは、葵共々顔が真っ青になった。
「…………たっ」
「タンスを隠せえーっ!!」
いや、それ卒業してからの話では?
けどこのままではチカゼが路頭に迷って、警察に追われる羽目に!?
二人は顔を見せ合いながら、「どうしよう!?」って言っているが……時すでに遅し。諦めなされ。
「……あ! ふふっ」
しかし、何か思い付いた様子の葵さん。何がそんなに嬉しいのでしょう。
((ちょっと嬉しそうだね))
「(え? うーん。嬉しいとはちょっと違うんだけど)」
葵は意を決して、チカゼに訪ねてみる。
「あのですねチカさん。このジンクスでは、“自分で相手の手首に巻き付けたら……”なんてのはありませんでしたよね?」
「(敬語?)ありませんですよアオイさん?」
何気に名前を呼ばれたのは初めてだったが、それどころではない葵は気付きもせず。「そうだよね……」と考え込んでいる。よくわかっていないチカゼは、その隣で首を傾げていた。
「だったらね? この場合は大丈夫なんじゃないかと思うんですが、どうでしょう!」
言いながら葵は、ぱっとネクタイが巻かれた手を高々と上げる。
「ああ成る程」と、そこでチカゼも納得したようだ。
チカゼは、ネクタイ自体は奪われていないので、ジンクスで言えば、どうにかこうにかセーフなのだ。
「それでっ! 提案なんだけどっ!」と、葵は挙手をしながら、ぐいぐいチカゼの方へと近寄った。
「新しいジンクスを、作ってみてはどうだろうか!」



