「おいっ! マジで放せって! くっそ、全然ビクともしねーっ」
「チカゼくんっ。ネクタイちょ~だい」
「絶対にやらねーっ!」
「…………ヤワラちゃん。やっちゃって」
「――!? やっ、やめろー!!」
そう言って、ヤワラと呼ばれたガタイのいい女子生徒は、チカゼの身包みを剥ごうとしている。
……うん。多分当たってたわ。あの子多分柔道してるわ。そんな気がするわ。
そして、とうとう――――
「ひょこまでだヒェーッ(ト)!!」
(※訳→そこまでだゼーッ(ト)!!)
変装した葵が登場したのだった!
【残り時間……あと9分】
その場にいた全員が動きを止め、葵に怪訝な目を向けた。
「(え……。何あの人)」
「(ていうか誰なの? バカなの?)」
「(全然顔わかんないんだけど……)」
女子生徒たちは、はじめはそんなバラバラなことを考えていたが。
「(ていうか、めちゃくちゃ気持ち悪いんですけど!)」
結局は同じ結論に至ってたりする。
説明しよう!
満を持して登場した今の葵は、体育倉庫にあったボロボロの汚らしいジャージに、何故かあの、風に靡いて今にも「ゼーッ(ト)!」っと言いたくなるような真っ赤なスカーフを着け、最終的に顔がバレたら不味いので、ストッキング(※まだ未使用だった! ラッキー!)を頭から被って引っ張っているのだ!
((まさか、そこまで体張るとは。……女、捨てたのね))
「(え? そこまで酷い??)ひょこの変態! ひゅぐにひょこの男の子から手を放ひなひゃいっ!」
「変態はあんたの方でしょうっ!?」
「――!?(な、なぜっ?)」
全力で女子たちにツッコまれている葵を見てチカゼは「(や、やべー。ガチで変態……っ)」と、体をプルプルさせながらも、一応頑張って笑いを堪えていた。
【残り時間……あと8分】



