すべてはあの花のために①


「おいっ! マジで放せって! くっそ、全然ビクともしねーっ」

「チカゼくんっ。ネクタイちょ~だい」

「絶対にやらねーっ!」

「…………ヤワラちゃん。やっちゃって」

「――!? やっ、やめろー!!」


 そう言って、ヤワラと呼ばれたガタイのいい女子生徒は、チカゼの身包みを剥ごうとしている。

 ……うん。多分当たってたわ。あの子多分柔道してるわ。そんな気がするわ。



 そして、とうとう――――


「ひょこまでだヒェーッ(ト)!!」
(※訳→そこまでだゼーッ(ト)!!)


 変装した葵が登場したのだった!



【残り時間……あと9分】



 その場にいた全員が動きを止め、葵に怪訝な目を向けた。


「(え……。何あの人)」
「(ていうか誰なの? バカなの?)」
「(全然顔わかんないんだけど……)」


 女子生徒たちは、はじめはそんなバラバラなことを考えていたが。


「(ていうか、めちゃくちゃ気持ち悪いんですけど!)」


 結局は同じ結論に至ってたりする。


 説明しよう!

 満を持して登場した今の葵は、体育倉庫にあったボロボロの汚らしいジャージに、何故かあの、風に靡いて今にも「ゼーッ(ト)!」っと言いたくなるような真っ赤なスカーフを着け、最終的に顔がバレたら不味いので、ストッキング(※まだ未使用だった! ラッキー!)を頭から被って引っ張っているのだ!


((まさか、そこまで体張るとは。……女、捨てたのね))

「(え? そこまで酷い??)ひょこの変態! ひゅぐにひょこの男の子から手を放ひなひゃいっ!」

「変態はあんたの方でしょうっ!?」

「――!?(な、なぜっ?)」


 全力で女子たちにツッコまれている葵を見てチカゼは「(や、やべー。ガチで変態……っ)」と、体をプルプルさせながらも、一応頑張って笑いを堪えていた。



【残り時間……あと8分】