「(え? チカくん、一体どうしたんだ……)」
葵はというと、最後に見た彼のあの姿に、違和感を感じずにはいられなかった。
「(あんなチカくんわたしは初めて見たけど、今の表情、し慣れてる感じがした)」
そんなことを考えていたら、倉庫の外から――――
「チカゼくんいたあー!!」
「きゃああああー!!」
奇声発生。ていうかもう見つかってるし。
瞬殺じゃんかー。せめてもうちょっともたせようよー。
【残り時間……あと12分30秒】
(※1分もたず)
心配になり、扉から少し覗いてみると……。
「チカゼくん、つーかまーえたっ!」
「――!?」
えー。もう捕まってるしー。
チカゼは、女子だから手が出せないのか。「やめろっ!」と言いながら、なんとかネクタイだけは必死に守っていた。
「(どうしよう! 助けなきゃ!)」
少なくとも外は女の子たちだけのようだ。三、四人がチカゼに群がっている。
「(――ぬあ!? しかも、なんかめちゃくちゃ強そうな人いるしっ!?)」
その群れの中に、一人だけガタイのいい人がいた。チカゼは、羽交い締めに遭っている。
「(絶対あの人、柔道の選手だ!)」
((あんた今、前髪のちょんまげだけで柔道って決めつけたでしょ))
「(えへ)」
((照れてる暇があるなら、さっさと助けてきなさい))
「(はーい)」
【残り時間……あと11分】
「(早く助けなきゃ!)」
何かないか……と、自分だとはバレずに助ける方法を探していた。
「(ん? ……ハッ! これは!)」
『よしっ! これしかない!』と、葵は手に取ったものを身に着け(※ちょっと汚いけど、背に腹はかえられない!)、チカゼを助けに向かった。
【残り時間……あと10分】



