すべてはあの花のために①


「(え? チカくん、一体どうしたんだ……)」


 葵はというと、最後に見た彼のあの姿に、違和感を感じずにはいられなかった。


「(あんなチカくんわたしは初めて見たけど、今の表情、し慣れてる感じがした)」


 そんなことを考えていたら、倉庫の外から――――


「チカゼくんいたあー!!」
「きゃああああー!!」


 奇声発生。ていうかもう見つかってるし。
 瞬殺じゃんかー。せめてもうちょっともたせようよー。


【残り時間……あと12分30秒】
(※1分もたず)



 心配になり、扉から少し覗いてみると……。


「チカゼくん、つーかまーえたっ!」
「――!?」


 えー。もう捕まってるしー。
 チカゼは、女子だから手が出せないのか。「やめろっ!」と言いながら、なんとかネクタイだけは必死に守っていた。


「(どうしよう! 助けなきゃ!)」


 少なくとも外は女の子たちだけのようだ。三、四人がチカゼに群がっている。


「(――ぬあ!? しかも、なんかめちゃくちゃ強そうな人いるしっ!?)」


 その群れの中に、一人だけガタイのいい人がいた。チカゼは、羽交い締めに遭っている。


「(絶対あの人、柔道の選手だ!)」

((あんた今、前髪のちょんまげだけで柔道って決めつけたでしょ))

「(えへ)」

((照れてる暇があるなら、さっさと助けてきなさい))

「(はーい)」



【残り時間……あと11分】



「(早く助けなきゃ!)」


 何かないか……と、自分だとはバレずに助ける方法を探していた。


「(ん? ……ハッ! これは!)」


『よしっ! これしかない!』と、葵は手に取ったものを身に着け(※ちょっと汚いけど、背に腹はかえられない!)、チカゼを助けに向かった。



【残り時間……あと10分】